17世紀 フレンチカントリー サイドキャビネット

お写真でこの重々しさ・・お伝えできるでしょうか?
デニム最古級のアンティーク家具になります。
英国アンティークディーラーの情報によれば、
ジョージアン(ジョージ1〜4世の治世:1714〜1830)の初期、
およそ18世紀前半の田舎の家具ということで入荷してまいりました。
タイトルに”フレンチカントリー” とありますが、フランスの田舎の家具、というわけではなく、
フランスの田舎風のイギリス家具になります。
ただデニムの見立てでは、年代についてはもう少し前。
17世紀末から18世紀初頭にかけて、歴史上、ちょうどイングランド王国とスコットランド王国が合併し、
今のイギリス連合王国(U.K.)の土台ができたころの家具ではないかと推測しています。
現存するコファーあるいはスウォードボックス(刀剣を収納する櫃)は、
およそ1690年頃、大体この時期に作られた個体が多い、というのがアンティーク家具業界の通説です。
こちらは鍵がついていないので、スウォードボックスではなく何らかの収納庫として使われていた可能性もありますが、
サイズ的にはコファーというよりも、やはり刀剣を収納するのにちょうどよいサイズ、内寸1,080mm。
後年はサイドキャビネットとして使用されていたものだそうですが、
もともとは武器庫だった可能性も十分あります。
・・スウォードボックス。
何だか、ちょっと恐ろしい言葉の響きですね。
当時、戦争の武器を収納していた本物の木箱ですから、21世紀の一般人にはちょっと近付きがたいオーラがあるかも。
でも、前所有者のイギリス人、あっけらかんとかわいい布の内張などして、サイドキャビネットに改造、
ブランケットボックスやリネンキャビネットにでも使っていたのでしょう。
そんな心のおおらかさにはかなりリスペクト・・。
私感はさておき、一応、本当に17世紀のスウォードボックスかどうか、時代考証をしてみます。
ポイントは4点、デザイン、工法、素材の材質、そして経年の状態変化、です。
まずデザイン。
書籍やらネットやらで検索してみると、13世紀から17世紀のほぼ同時代のものまでありましたが、
確かにデザインとしてコファーほど背が低くなく、中のものを取り出しやすいサイドキャビネット型。
こちらのボックスとはほぼ共通、同型であることがわかりました。
サイズはまちまちありますが、「刀剣」は70cm前後の全長が中心で、長いもので1mほど。
その収納庫としてはこのボックス、ぴったりのサイズです。
また、いずれもスウォードボックスはスコットランドのお城から出たものが多いこと、
こちらの出所情報がスコットランドに接したイングランド北部のサンダーランドであることも
話のつじつまが合っています。
カブリオールレッグやホタテ貝風の装飾も、18世紀以降のロココ・クイーンアン風ではなく、
バロック系のCスクロールスタイル(17世紀主流)。
こちらも時代性に合致しています。
次に工法。
本体平面部分はオークの無垢板を、単に接ぎ合わせたかなり原始的な工法。
できるだけ大判の板を使っているので各面一枚板ですが、
天板は「さね継ぎ(隙間が見えないようにかぎ状に組む工法)」やつなぎ材などもせずに
2枚を接ぎ合わせているので、板の収縮で入荷時は隙間が出ていました。
コーナーの接合方法はほぞ継ぎですが、おそらく精度が低かったのでしょう、
すべてテノンペグ(木釘)で補強されています。
鉄の釘打ちはされていません。
一般的に、17世紀には接合技術が急速に進歩した時代で、
継ぎ手にテノンペグで補強することがなくなっていった時期でした。
ただ、当時は情報の伝達が遅く、そうした最新技術の伝播が田舎のエリアまで伝わっていくには
かなり時間がかかっていたそうです。
そういう点でも、このような田舎の家具に関しては、製作年代の時代性としてロジックが通っています。
17世紀末の家具としては、工法的には間違いではありません。
またオリジナルと思われる天板の蝶番(ヒンジ)は、もちろんハンドメイドですが、
形状から見ると、明らかに、まだまだ鉄の加工技術が低かった時代のもの。
非常に硬い錬鉄を強引に曲げて手作りしたかのような、この櫃オリジナルの金具。
良く300年もの間、折れることなく維持されてきたものです。
素材と経年変化につきましては、あくまでデニムの経験に基づく感覚的なものになりますが、
日本の「ミズナラ」に近いヴィクトリアン(19世紀)のオーク材とは少し質感が違って見えます。
ジョージアンのオーク家具(200年前くらい)に近い雰囲気がありますが、
こちらのボックスは時代が正しければ3世紀は経っていることになりますので、
素材の風合いだけで17世紀ものかどうかの判断をすることはちょっと難しいです。
虫食いのあとや木肌の風合いからすると、少なくとも200年前よりも新しい、
ということだけはあり得ない、とは感覚的にわかります。
・・と、以上のことを考え合わせてみると、可能性としては300年位前の家具である確率はかなり高いと思われます。
それにしても、日本で言うとまだ戦国時代にも近い時代のものですから、
普通に考えれば、歴史資料館に飾られていてもおかしくないシロモノ。
それが「実用アンティーク」として普通にマーケットで売られているわけですから、
イギリス人の懐って、よほど深い?
いや、というよりも、たまたま紛れ込んでしまっただけかもしれません。
つまり、相当な掘り出し物ってこと。
古ければ古いほどアンティークに興味のわく方、または武器マニアの方、
これを見逃す手はありませんよ・・。
(Buyer/YM)
価格(税込):
220,000
円
参考市場価格:
210,000
円
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