チッペンデールスタイルキャビネット

素敵な高級アンティークが入荷いたしました!
イギリス19世紀末から20世紀初頭にかけて製作された、マホガニー無垢のチッペンデールスタイルキャビネットです。
これこそ、アンティークの極み・・。
家具の予備知識などなくても、この凛々しくも、華やかなエクステリアをご覧いただければ、
このキャビネットが安価な大量生産品か、ハンドメイドのオーダー家具か、
ほぼ100%の方がご判断いただけることと思います。
・・なんて安っぽいご紹介の仕方で申し訳ありません。
でも、一言でこのブックケースを形容するには、このような言い回しが最も適切ではないかと思いました。
ただし、英国のアンティークを専門に見てきた方の見立てではちょっと違うと思います。
そうですね、つまり、専門家の方でしたらこうおっしゃるでしょう。
「ヴィクトリア後期からエドワード期にかけては、家具デザインに過去のリバイバルが大変流行した時代。
中でも人気の高かったのは、クイーンアンとチッペンデール様式の復刻家具。
このキャビネットは、そのチッペンデールのシノワズリ(中国趣味)スタイルを模写してつくられたもの。」
まさにその通り。的確な解説です。
しかし、もっと専門的に研究されてらっしゃる方になると、
その解説の裏には蔑視的なニュアンスも含まれているかもしれません。
(当時の流行に迎合してつくられた、普及家具だろ。)
う〜ん、大きなくくりでは言い当てられているかもしれませんが、
そのデザインだけで判断されるのはいかがなものでしょうか。
この家具のつくり手が、お金儲けのためだけに普及家具を作ったのか、
それとも家具職人としての自己表現の結果、この家具に行き着いたのか・・。
筆者としては後者であるように思われてなりません。
理由ですか?
まず、基本的に家具としてのつくりの質が高いこと。
量産式のマシンメイドでないことは、引き出しなどのハンドメイドの接合部をみると
きちんと設計・製作された家具であることを確認できますが、
使われている素材も見えない構成材にまでマホガニー無垢が使用されるなど、手が抜かれていません。
既に当時、コストカットの意識が進んでいた時代でしたから
明らかに良質の家具を製作しよう、という意識が感じられます。
二つ目は家具づくりに明確なコンセプトが感じられること。
例えば、デザインに関してはチャイニーズチッペンデールの特徴的なぺディメントと呼ばれる支輪(天飾り)が廃され、
シェラトン式の“モールドディンテル”というシンプルなぺディメントに変更されています。
これは簡素化によるコストカットというよりもおそらく当時の住環境に配慮しているのでしょう、
収納スペースを多く稼げる天飾りの低いデザインにして、実用性を向上させた結果と思われます。
つまり家具は王侯貴族のぜいたく品ではなく市民のための実用品なのだ、という強い信念をもち、
そうした信念が主張として、家具デザインに現れたものなのでしょう。
単にペディメントの製作の手間を厭うていたわけではないことは、
前面を飾るインレイワーク(象嵌の仕事)を見れば想像がつきます。
色の違う様々な木片を張り合わせてこれほどの文様を作ることが、どれほどの手間であることか・・。
これだけの仕事をしていながら、当時、多くの彫刻師のいた時代に、
彫刻を盛り込んだペディメントをはずす理由は他に考えられません。
また、中央の台輪を引き出し収納に変えるという合理的な発想の家具職人たちです。
デザインよりも実用性を優先させた事がうかがわれます。
ちなみにこの台輪の部分は、かなり古い時代、テーブルの上に小さなチェストをのせたり、
チェストを二段重ねしたりしていたような、家具の種類がそれほど置くはなかった時代に生まれたオプションパーツです。
こうした上台、下台を持つ二段構成の家具のつなぎ目を違和感なくするために、
後から付けられるようになった部品にあたります。
アンティークにちょっと詳しい方なら、トールボーイやチェストオンスタンド、などといった家具をご想像いただけると思います。
ペディメントを低くして、この「台輪」部分の高さを稼ぎ、台輪のデザインと一体化させながら収納をつくる発想など、
これを意欲的、と呼ばず、何と呼んだらよいのでしょう。
少なくとも「商業的」などと表現とは無縁の事と思います。
・・おっと、気がついたら、興奮して読みにくい長文になってしまいました。
失礼しました。
何だか、商品の説明になっているのか、なっていないのかわかりませんが、
要するに、大きな歴史の流れの中で、確かに正しくその時代を生きた家具職人がいて、
その職人が最善の判断で製作した家具である、ということがお伝えできていればこの上なく幸いです。
「チャイニーズチッペンデールにシェラトンアレンジを加えた、ヴィクトリアンのリバイバル家具。」
そんな単純な説明で伝えられてしまうには惜しすぎる家具でしたので・・。
(Buyer/YM)
価格(税込):
218,400
円
参考市場価格:
218,400
円
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