トレンチアート ブラスシェルケース/花瓶

20世紀初頭、今から100年ほど前、第一次世界大戦のトレンチアート、
ソリッドブラスの花瓶ペア/シェルケースです。
保存状態の良い、とても珍しい骨董品です。
ところで、”トレンチアート”ってご存知ですか?
デザイン業界の方ならご存知の方も多いかもしれませんね。
現在、広い意味では戦争に関連したアート全般を指しているようです。
でも本来は第一次大戦中の兵士たちが、自分たちの身の回りの材料で作った、
ちょっとした手作り品のことを意味しています。
骨董品に詳しい方ならコレクションアイテムとして良くご存じでしょう。
話はちょっとそれますが、1914年に始まった第一次世界大戦は、ご存知の通り、
全世界をまきこんだ初めての世界戦争でした。
しかし一方では、初めて近代兵器が登場した戦争としても知られています。
当時の近代兵器といえば、もちろん飛行機や戦車も登場していますが、まだまだ活躍できるほどの質や量はなく、
もっぱら主役だったのは機関銃とライフル銃。
つまり近代兵器による戦争とは言われていますが、結局は戦場の主役は歩兵たちだったのです。
第一次大戦時の歩兵たちは、機関銃やライフル銃による銃撃戦に備え、塹壕戦を展開しました。
彼らは広大なヨーロッパの大地に数百キロともいわれる塹壕線を掘り、防御ラインを固めました。
そのため、ヨーロッパ戦線は予想外に長引き、持久戦に突入します。
そして、このような戦場でのこう着状態、また戦争の長期化が、皮肉にも
兵士たちに塹壕の中でつかの間の休息を与えることになったのです。
休息の時間を得た兵士たち。
その中でも様々な分野の職人たちは、身近にあった弾丸の薬きょうや
持っていたコイン、ライターなどにちょっとした細工などを施したり、
指輪などのアクセサリー、インテリア品などをつくって時間をつぶしていたそうです。
そうしてつくられた「職人」兵士たちの数々の作品が、のちに”トレンチ(塹壕)アート”と呼ばれることになりました。
それらの作品は終戦後も人々に大切に受け継がれていき、いまでもヨーロッパ各地でトレンチアートを見ることができます。
トレンチアートの中には、とてもデザインの優れた作品も存在し、後世、商業的にリプロダクトされ、
その作品もトレンチアートと呼ばれたり、と今では言葉の持つ意味自体は広くなっているようです。
第二次大戦以降の戦争でも、兵士たちの手作り品をトレンチアートと呼んだりもしているようです。
でも、本来のトレンチアートとは第一次大戦の戦時下のもの。
こちらの「花瓶」は、本来弾丸の「薬莢」(シェルケース)だったものを、
叩いてラッパ状に成形させた、純粋な第一次大戦時のトレンチアートになります。
第一次世界大戦という、私たち自身にも直接関わりのある歴史の遺品です。
第一次大戦の兵士たちは開戦当時、西欧では騎士道精神の元、愛国心が高く
志願して参戦した若者が多かったといわれています。
しかし、塹壕戦の結果・・彼らの意識がどう変わっていったのか、
このトレンチアートを見れば容易に想像がつきますよね。
こう着した西部戦線、いつ終わるともなく続く一進一退の持久戦に、
兵士たちの心には初めのころの熱情はすでになく、もはや不安と絶望しかなかったはずです。
唯一の灯りは、もしもう一度故郷へ戻れたら、今度は・・というかすかな希望だけだったと思います。
薬莢を「花瓶」にアートした当時の兵士も、職人からの志願兵だったのでしょうか、
過ぎた日を懐かしみ、またいつか元の職場へ戻れる日が来ることを願っていたことでしょう。
・・そんな万感の思いは100年の時を超え、ぴかぴかなゴールドの躯体が
今もなお、私たちの心に語りかけてきてくれます。
そしてまた、この「花瓶」がある限り、
かつて、国のために自身の生命をささげた多くの若者たちがいたことは、
決して私たちの記憶から消え去ることはありません・・。
(Buyer/YM)
価格(税込):
12,600
円
参考市場価格:
12,600
円
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