JACOB & JOSEF KOHN ベントウッドチェアNo4 "カフェ・ダウム"


オーストリアで1880年〜1890年代につくられたと思われる、
ヤコブ&ヨゼフ コーンJACOB & JOSEF KOHN社製のオリジナル・ベントウッドチェアです。
長くイギリスで使われていたアンティークチェアになります。

※デニムの愛するベントウッドチェアのレストア情報は、職人スタッフの綴る「レストア奮闘記」(予告編)もご参照ください。

こちらは19世紀半ば、トーネット商会により発売された、”No4”というベントウッドチェア最初期のモデルです。

トーネット”No4”は、「世界初の量産家具」という世界史に残る名作椅子である一方、
オーストリアの首都、ウィーンのサロン、"カフェ・ダウム"Cafe Daumで初めて使用された史実により、
コレクターには「カフェダウムの椅子」と呼ばれた著名なモデルです。

世界的に人気の高いモデルですので、ネットでも、
”トーネット No4 ダウム”と検索すれば、世界各国でさまざまな情報に行き当たります。

オリジナルデザインはトーネットですが、当時、No4は人気の高い普及モデルだったのでしょう、
ヤコブ&ヨゼフ コーンJACOB & JOSEF KOHNからもNo4ダウムは販売されています。

といっても、No4ダウムはNo14などとは違い、曲げ木家具メーカーならどんなメーカーでも作れた、という
標準的なモデルではありませんでした。

製造には技術的なハードルが高く、量産家具といっても後発モデルから見れば、
ごく初期の生産効率の悪いモデルだったため、筆者が知る限り、
トーネットとJJコーン社以外に、現存しているアンティークNo4ダウムはありません。
"ムンドス”MUNDUSというメーカーのアンティークNo4ダウムはありますが、
ムンドスはトーネットとJJコーン社が合併して出来た会社ですので、トーネット社製というになります。


その技術的なハードルとは、いくつか難しい製造技術があったことと思われますが、
有名なのは「2重の曲げ」、すなわち ”S” 字カーブをつくることでした。
つまりNo4ダウムのアイデンティティでもある、
背もたれにシンメトリーに配置された、2本の ”S” 字=「唐草文様」の製造技術です。

どういうことかというと、“C“字のカーブを考えるとわかりやすいのですが、
1本の木を “C“ 字に曲げると内側の繊維が収縮し、外側の繊維が伸張します。
この曲げは、伸ばすか縮めるかの一方向に固定させるだけですので、
比較的早くから完成された技術でした。

ところが 1本の木を”S” 字に曲げようとすると、内側も外側も一部は収縮しながらも一部は伸張もしています。
すなわち二重に曲げなければなりません。

そのため、当初は1本の同じ繊維の木(つまり1本の無垢材)では”S” 字の曲げは難しく、
2本の木を張り合わせた材料(つまり1本の合板)で内側と外側の繊維を変えることで
”S” 字の曲げに対応していたのです。

しかし、ミヒャエル・トーネットは、1856年、同じ繊維構造をもつ1本の無垢材ですら、
乾燥後もはじける(割れる)ことなく曲げることができるほどに技術を向上させました。
つまり、”S” 字の曲げは初期の “C“ 字曲げ技術よりも、1段階上の技術レベルになるのです。

その後、1869年にミヒャエル・トーネット商会の持つ「曲げ木技術」の特許が切れると、
あたかもゴールドラッシュのように、無数の家具メーカーが曲げ木家具の製造に参入しましたが、
最終的に「2重の曲げ」技術をはじめ、トーネット商会の技術レベルにまで到達した会社は、
現存しているアンティークを見る限り、JJコーン社などのわずか数社だったと思われます。

No4ダウムのように製造が難しく手間のかかるモデルは、
一朝一夕には作れなかった(それとも効率が悪く作らなかった?)ということなのでしょう。

ちなみに、JJコーン社は、1869年、トーネットの曲げ木特許が切れると同時に設立された会社で、
1922年、トーネットと合併するまではトーネットの最大のコンペティターとされていた
業界トップクラスの曲げ木家具メーカーでした。

JJk社はGシーゲルやJ・ホフマン、O・ワグナーなど、著名なデザイナーと相次いで契約し、
かのドイツ・バウハウスとも協業するなど、実績も十分、名実ともに「名門」企業だったといえます。

お話が長くなりましたが、こちらのチェアはそのJJコーン社の19世紀オリジナル品。

デニムのイギリスの契約ディーラー(のお友達)が、チェスターフィールドという地方の民家の軒先で
朽ち果てそうになっていた「お宝」を救出したものになります。(笑)

そんな「お宝」を数週間かけてデニムが隅々まで完璧にレストアいたしました。
130年前の往年の姿そのままに・・。

本物を知る方にぜひ受け継いでいっていただきたい、まぎれもない19世紀の「遺産」です・・。

(Buyer/YM)



価格(税込): 105,000 円
参考市場価格: 105,000 円
申し訳ございませんが、只今品切れ中です。


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