A Lady wearing A Large Hat/ Crystolian Painting

非常に珍しい”クリストリウムCrystoleum”が入荷しました。
何と、平面ガラス仕様のクリストリアン・ペインティングです!
ええ?
”クリストリウム”は凸レンズのオイルペイントではないの?
しかし現地ディーラーではこの絵画がクリストリウムだというのです。
Number 41 is a Chrystoleum painting, maybe you're puzzled because the glass is not bowed shape, but they did paint them on flat glass also.
(No41の絵はクリストリウムです。あなたはガラスがボール形をしていないから混乱しているのでしょう。でもクリストリウムにはフラットガラスもあります。)
なるほど。
平面ガラスのオイルペイント絵画もクリストリウムに含むのかどうかは別にして、
要するに、クリストリウムの制作法はガラスの形状を問わない、ということなのでしょう。
基本的にクリストリウムという絵画手法は、写真や印刷物などをボール型をしたガラスの裏面に転写し、
その絵柄(つまり下絵)に、もう一枚、別のガラスにオイルペインティングで色付けをして、
2枚のガラスを重ね合わして天然色写真のように仕上げる特殊な絵画技法です。
その原理からすれば、確かにガラスが凸レンズである必要はありませんね。
そもそもクリストリウムとは、写真の歴史の初期段階において、
写真の技術を応用し、新しいメディアの一つとして考案されたものでした。
すなわち、19世紀前半に写真が誕生し、モノクロ写真が普及し始めるとともに、
カラー写真を求める時代のニーズが高まっていました。
そんな時代を背景に登場したのが天然色写真調のクリストリウムペインティングでした。
クリストリウムは19世紀後半にはイギリスでかなり流行していた絵画ですが、
第一次大戦(1914〜1918年)後、カラー写真の普及を可能にする技術が開発されたためでしょう、
1914年以降、急速に衰退していくことになったそうです。
こちらの絵画には1910年のサインがありますから、
まさにクリストリウムの歴史に幕を閉じようとする、ちょうどその直前の時代に製作されたことになります。
とすれば、クリストリウムに傾倒していた人たちの中には、何とか自らのライフワークのクリストリウムを発展させて、
延命させようとしていた人たちがいたとしても不思議ではありません。
そこで今までのクリストリウムとちょっと違った作品を製作してみた、と考えては不自然でしょうか。
この作品が他のクリストリウムと違っている点は、単にガラスがフラットになっているだけではなく、
絵のベースに、キャンバスの網目のような風合いが残されている点にも他のクリストリウムとの差異を感じます。
モノクロのオリジナルリトグラフにダイレクトに色づけをしたような、
どこか、「直接的」な技法を感じるこの作品、
もしかすると、今までのクリストリウムの欠点を克服し、普及させようと試みた、
試作品のような位置づけだったのではないでしょうか?
背面のギャラリーラベルから、価値ある作品をきちんとフレームに収めていることは確認できますし、
平面ガラスを良く見てみると、わずかに気泡の混入が見えますので、
クリストリウムの技法で製作されていることには間違いはないと思います。
尚かつ、右下隅に光にかざしてみるとかすかに「1911・・」とフレーミングされたと思われる年号が見られます。
(本当によく見ないと見えません。)
以上のことから、このクリストリウムが歴史から消え去る直前に製作された作品であることには
疑いの余地はありません。
歴史の最後に自分なりに改良して見せた、心あるクリストリウム作家の「遺作」だとすれば、
きっと将来、「歴史の一里塚」として、評価される時が来るでしょう。
そういえば、イギリスのクリストリウムが消滅して、今年でちょうど100年目に当たります。
その区切りの年に、このような「遺作」とめぐり合うとは、何かの縁・・?
(Buyer/YM)
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参考市場価格:
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