ヴィクトリアン 3フォールディング スクリーン


今から130年ほど前、19世紀末のレイト・ヴィクトリアンに製作された、
3パネル・フォールディングスクリーンです。
ウッドフレームのパネル全面に、当時のスクラップを余すところなく張り込んだ、
大変珍しいアンティークになります。

フォールディングスクリーンといえば、英国アンティークのコレクティング・ファニチャーを代表するアイテム。

かつてデニムに入荷したスクリーンも、明らかに昔の上流階級が使っていたものを
後の富裕層がコレクションとして所有していたものであろうと、
容易に推測できる高価なお品でした。

でも・・このスクリーンって?

イギリス現地からは、富裕層がコレクションしていたヴィクトリアンの時代のスクラップ・スクリーン、
という情報くらいしか得られておりません。

確かに深く考えなければ、ああ、そういうものか、とスルーしてしまう程度のことかもしれませんが、
”デニム” が他のアンティークショップと違うところは、「?」を徹底的に追及してしまう点。

どうも、最初っから気になっていた「?」があったんですよね。
片面(黒地ベースの方)は、スクラップスクリーンといわれて納得できます。
何かの絵本や雑誌から切り取った人物や動物などをコレクションしていったのでしょう。

でも、もう一方の面は・・これ、本当にスクラップ?

う~ん、確かにところどころ切り抜きが貼られていますが、
よくよく見てみると、ベースはどうもパネル全面に貼られている一枚の大きな絵のように見えます。

一枚の大きな絵?

19世紀にこんな大きなカラー印刷物が可能だった?
いや、オフセット印刷やカラープリントが普及したのは20世紀に入ってからのことですから、そんなはずはない。
とすると、リトグラフか何か?

紙に何かコーティングのような表面加工がされているようで、多少の撥水性がありそうですので、
一般的なイメージのリトグラフとはちょっと違うような・・。
でも、手書きのようには思えないし。

そう、最初に感じた疑問というのは、「このパネルのためにあつらえた大きな絵は、一体何?」、ということでした。

絵の内容を見てみると、ファッションや家具のデザインからして、17世紀のジャコビアンのころ、
すなわち、イギリス史的に言うと、ピューリタン革命のころではないかと思います。

いかにも、ヴィクトリアンの時代に流行していたような絵。
こちら側の面は間違いなく、19世紀オリジナルのパネルのように思われます。

木部は、ヴィクトリアンの時代にしては飾り気のないストレートなウッドフレーム。
でも、素材はサテンウッドという高級材。
サテンウッドは18世紀のイギリスでローズウッドとともに人気のあった素材で、
西インド諸島からの輸入材です。

構造的にみて、家具屋が作ったパネルにしてはシンプルすきるけれども、
素材のセレクトは家具屋の目利き。

以上の要素をまとめてみると、結論から言って、このスクリーンとは・・。

もともと何かの物語のリトグラフを、3面のパネル全面に貼り込んでいたものではないかと思います。

もちろん、パネルに貼られた絵は、パッチワークなどのない大きな1枚の絵。
現在、黒地ベースの側にも、もともとは大きな絵が貼られていたのかもしれません。

そして、製作者はその絵を制作した側が、きっと主体。
家具工房が製作したのなら、もっとフレームの造形に手を入れたはずでしょう。
つまり、絵の制作者が家具工房に製作を依頼したもの、と推測しています。

そして、リトグラフだとすれば、少量ながらいくつか同じものを製作していたはず。
どこかにもしかすると同じスクリーンが存在しているかもしれません。

一方、木の素材があまり使われない高級材である点からして、富裕層向けか、学校などの公共施設向けの商品か。

またパネルについては、長く使われているうちに、汚してしまったものか、自然劣化したか、などの理由で、
パッチワークをする必要があったのかもでしょう。
それが1つ2つと増えていき・・。

反対面の黒ベースの方は、前の所有者が片面のパッチワークを参考にあとからつけたもののように思えます。
絵の人物のファッションを見ると、20世紀に入ったころの絵が多いようですね。

お気に入りの絵を1つ、2つ、と、それこそ文字通りスクラップして行ったのが現在の姿だと思います。

だから何?、というわけではありませんが、
素性を明らかにするのがアンティークショップの性(さが)。
まあ、話半分くらいに読み流しておいてください。

ちなみに、もともとスクリーンとは、
暖炉の火の粉やすきま風をさえぎったりするために生まれた機能家具ですが、
時代が進むにつれてその機能的な価値は徐々に低下し、
お部屋の空間を魅力的に飾るためのインテリアとして、
そのデザイン性だけがどんどん特化して行くようになりました。

そしてヴィクトリアンの末期にはファイヤースペース(居間)において、
メインのインテリア・アイテムとしてその流行はピークを迎えることとなり、
第一次大戦まではそんな貴族趣味の傾向が続いていたようでした。

で、コレクションしていた当時の富裕層の人たちの関心は、もっぱらそのパネルデザインの豪華さ。

もともと日本や東洋の「屏風」などの影響もあったのでしょう、いわゆる「金屏風」のようなシノワズリー風の絵画や
刺繍のシルクパネル、漆の絵画や“パピエ・マーシュ”と呼ばれる塗装技術など、様々な技法や素材を駆使して、
スクリーンはあたかも美術品であるかのごとく、変貌を遂げていきました。

・・という、そんな時代背景の中、このスクリーンは前オーナーの手によって、
どんどん装飾的にパッチワークされていったのだと思います。

パッチワークも一つの芸術。
なかなかのアーティスティックな出来栄えだと思いませんか?

子供の絵が多いのは、前オーナーのことを詮索する一つの手掛かり。

きっと、小学校の校長室に置かれていたものだったとか・・。
(きりがないですね。長文失礼しました。)

(Buyer/YM)



価格(税込): 94,500 円
参考市場価格: 94,500 円
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