トーネットThonet No98スピンドルバック ベントウッドロッキングチェア


今から1世紀ほど前、ポーランドで製作されたと思われる、
トーネットThonet No98スタイルの古いベントウッドロッキングチェアです。
非常に珍しいコレクションピースです。

こちらのロッキングチェアは、家具の歴史を塗り変えたトーネットThonet社が
19世紀末に発売した商品モデル、♯98のロッキングチェア版になります。

座面のプレスシートのエンボス柄から見て、19世紀末〜20世紀初めごろの旧トーネット社製、
と思われますが、残念ながら、ペーパーラベルが塗装されてしまっていて、
確実にトーネット社と断言することはできません。

もし他社製の可能性があるとすれば、チェコのフィッシェルFischel社。
ただフィッシェルはペーパーラベルが前ではなく横に貼られていることが多いのと、
また、フィッシェルにはあるはずの刻印がないのでトーネット製の方が可能性が高いと思います。

尚、お写真ではサイズ感がわかりにくいかもしれませんが、
こちらは通常のベントウッドチェアをそのままロッキングチェアにしたかのような、
実用にはちょうど良いサイズ。

トーネットのロッキングチェアといえば、#7000番台の高級ラインで、
高さが1.2mクラスもある大柄なラウンジチェアのシリーズになるのですが、
対して、こちらは約86cmですから、大人と子供くらいの差があります。

しかし、実際のチャイルドロッキングチェアといえば、
高さが60cmくらいですので、明らかにこちらは大人向けの商品。

でも、フツーの大人向けの商品なのに、実は、こちらのロッキングチェアは、
一般的に出回っている当時もののトーネット社カタログには掲載されていないかったのです。
ということは、すなわち・・。

こちらは国内向けではなく輸出専用モデルとして作られていたのでは、と考えざるを得ません。

つまり、大柄なロッキングチェアは輸送コストがかかりすぎて、輸出先では販売がおもわしくなかったため、
このようなダウンサイジングした商品を開発したのではないか、ということです。

いくらノックダウン式で輸送には都合のよいベントウッドチェアでも、
#7000番台のロッキングチェアともなると、1.2m×1.2mの規格輸送ボックスに収納できなかったのでしょう、
ロッキングチェアの輸送方法は根本から見直す必要があったと思います。

またロッキングチェアの製作には、8mもの長さをもつ、良質なヨーロピアンビーチ材が必要なため、
それがコスト高の要因となり、材料面でも一考の必要があったはずです。

もともとトーネット社では、当時枯渇しつつあったポーランド産のビーチ材を有効活用しようと、
人気のあったNo18を改良して、輸出国向けの廉価版、No54を発売しました。
部品を小さく、安く、輸送しやすく、と見直すことで新しい戦略モデルを開発した、というわけですね。

おそらく、こちらのベントウッドロッキングチェアも同様に、
そのような時代背景の中、輸出先での量販モデルとして開発されたのではと思っております。

オーストリアの国内的には、ロッキングチェアといえは、トーネット社のフラッグシップモデルだったわけですから、
逆にこのような廉価版が共存すると、ブランドイメージがマイナスになりかねなかったため、
あえて国内発売はしなかったのかもしれません。

実際、旧トーネットのおひざ元、オーストリアやドイツでは、このタイプのロッキングチェアは見たことがなく、
一方、イギリスでは何度かこのロッキングチェアに遭遇したことがあります。

いや〜、想像すればするほどストーリーが広がるベントウッド・ワールド。
実に面白いですね。

まあ、何はともあれ、アンティークのベントウッドロッカーといえば、
パブロ・ピカソも愛用した、昔からのコレクティングファニチャーですから、
このようなコンディションの良い実用アンティークは、トーネットコレクターの方なら決して見逃す手はないでしょう。

古き良き時代のリズムに揺られながら、
稀代の企業家、ミヒャエル・トーネットの生涯を、うつらうつらと偲んでみてはいかがでしょうか・・。

(Buyer/YM)



価格(税込): 75,600 円
参考市場価格: 73,500 円
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