スパニッシュ セレモニアルスウォード ’タント モンタTanto monta’

1940年ごろのスペインで製作されたセレモニアルスウォード(儀礼用の剣)です。
イギリスアンティークとして入荷しました。
※こちらは模造剣になります。
材質は錬鉄製かと思われますが、護身用としては不適格かと思われますので、装飾品としてご理解をお願いいたします。
こちらは現地のアンティークオークションよりデニムの契約ディーラーが入手したもので、
流通経路から見て、直近ではイギリス人の個人所有のプライベートコレクションだったのではないかという事です。
その他、出所などの詳細情報は不明です。
時代考証については、英国現地のディーラー情報によれば第二次大戦後に作られたもの、とのこと。
確かに20世紀半ばに普及したベークライト製と思われる柄(え)を見れば、
そのころに作られたものであるかのようには思われます。
ただし、こちらのスウォードは、そんな時代考証などしてみたところで実はまったくの無意味。
なぜって、とても有名なセレモニアルスウォードだから、なのです。
刀身に刻まれた”TOLEDO”はご存じのとおり、スペインの古都、トレドの街のこと。
トレドは古くから鉄製品の産地として有名な都市で、古くは刀剣の製造から、
現在ではナイフの製造の中心地と言われています。
その鉄器で有名な地で作られた剣のハンドガード(つかの部分)には、何やら意味ありげな刻印が・・。
そこには、
“Tanto monta, monta tanto Isabel como Fernando.”(イサベル女王とフェルナンド王は共に同じ権力をもつ)
と記されています。
こちらは、この碑文とこの剣のカタチを見ただけで、スペイン通の方でしたら、
「ああ、あの剣ね」と理解してしまうほどの有名な剣です。
話が長くなってしまうのでおおざっぱにだけご紹介させていただきますが、
その碑文は15世紀にイベリア半島に乱立していたカトリック系の諸王国が統一され、
スペイン王国が誕生した際の史実を象徴している言葉。
要するに、こちらは建国の銘文が記されている剣、なのです。
学生時代に世界史を勉強された方なら覚えてらっしゃると思いますが、
かつてイベリア半島は、8世紀以降15世紀にいたるまで、つまりスペインが誕生する以前、
イスラム勢力とカトリック勢力との熾烈な戦場の地でした。
良く入試問題などに登場していた”レコンキスタ(再征服運動)”の時代ってやつです。
レコンキスタは最終的に1492年、カトリック勢が最後のイスラム勢力をグラナダで駆逐し、
カトリック勢力側の完全勝利で終わるのですが、グラナダ陥落以前、ほぼカトリック勢側の優位が決し始めると、
今度はカトリック勢の中で権力争い、内紛が始まってしまうんですね。
イベリア半島にはキリスト系諸王国が乱立し、後にはカスティリャとアラゴンの2王国に収束していきますが、
イスラム対カトリックの雌雄が決した後になっても、キリスト勢の内乱は絶えません。
そんな時代がしばらく続きますが、1479年になると、
アラゴン王国の皇太子フェルナンドとカスティリャ王国の王女イサベルが
国家統一の悲願のために結婚を決断します。
このことで内乱は終息し、統一国家スペイン王国が誕生するんです。
当時主要な2つの王国の国王であった二人は、平等の立場(タントモンタTanto Monta)でスペインを統治し、
国家統一を実現させました。
さらに数年後、最後のイスラム勢力をも駆逐し、レコンキスタも完了させます。
こうした功績をたたえ、教皇は彼らに「カトリック両王」の称号を与えます。
この史実に基づいて作られたのが、こちらのセレモニアルスウォード、タント モンタTanto montaの剣。
この「儀式の剣」は、スペイン統一以降、さまざまな国家の宗教的・政治的儀式において、
王権の象徴として用いられるようになったという事です。
こちらはそんなタントモンタの剣を模して、鉄器の街、トレドで作られたインテリア。
なかなか入手できるものではありません。
・・ということで、時代考証の必要がない理由がおわかりいただけましたか?
「20世紀に作られたタントモンタの剣」と言うだけで十分なアンティークアイテムなのですから、ね。
とはいえ、フランコ政権時代(1939〜75年)に良く作られていたもの、という情報がありますので、
ある程度の年代に関する推測はできますけど。
西ヨーロッパの大きな歴史の流れを身近に感じるアンティーク。
ぜひアンティーク上級者の方のお手元に・・。
(Buyer/YM)
価格(税込):
37,800
円
参考市場価格:
36,750
円
[9]かごを見る
[0]TOPページへ
LOCKON CO.,LTD.