エルムElm &ユーウッドYewwood アーリーヴィクトリアン ダブルボウバックチェア

今から150年以上前、19世紀半ばのミッド・ヴィクトリア期、
イギリスで製作された、ウィンザースタイルのハイバックアームチェアです。
アンティークファンの方ならご周知の”プレミアムチェア”ですね。
英国アンティークの中では昔から常に高値で取引されてきた
コレクティングファニチャー(収集目的の高級骨董)の代表格、ダブルボウバックウィンザーです。
あまりアンティークに馴染みのない方ですと、
「え? この値段、うそでしょ?」
「なんでこんな古い椅子が、こんなに高値?」
と思われることでしょう。
それはそうですよね。
良く見なければわからない似たような家具が、
ともすれば新品でこのチェアの10分の1くらいの値段で売られているのですから。
でも・・そもそも両者は根本的に違うのです。
比較すること自体にどだい無理があるのです。
現代のリプロダクション(復刻品)では、良くできてはいても、
あくまでそれは多くの家具の中で、1つの椅子の種類、というだけにすぎません。
つまりそれらは売買を目的とした「商品」。
「効率化」という商業主義のもと、「こだわり」という「作る側」の論理で製作された家具の一つにしか過ぎません。
一方、19世紀以前、このようなハイバックアームチェアは人の身分を示す「象徴」でした。
決して売り買いされるためにつくられた商品ではありません。
つまり、商売上の利益を優先するような家具製作とは無関係で、
必要だからその材料を使い、必要だからそのデザインをし、必要だからその工法を用いる、
つまり、「座る人ありき」でつくられた階級社会の献上品なのです。
要するに、使う人の利益と製作方法の筋道のみが通っていて、
作る側の論理とか商売の合理性などは全く無視された、極めて不合理な概念でつくられているのです。
・・と、このような説明でご理解いただけますでしょうか?
単なるマスプロダクション(量産品)とオーダーメイド(1点もの)という違いだけではありません。
「世俗」と「芸術」くらいの違いはあると思います。
話が抽象的すぎますでしょうか。
ちょっと大雑把な話でしたが、もう少し具体的なお話をしますと、高価なウィンザーチェアは
材料にエルムElm(ニレ)とユーYewwood(イチイ)が使われているものが多いです。
それはなぜか?
単純な話、その材料がもっとも良い、最適だからです。
エルムは硬く目が詰んでいて木目が良く、使われるほどに人肌になじんできます。
ローズウッドのカントリー版、的なイメージです。
ユーはこちらのボウバック(背もたれの笠木)の曲げ木に使われている材料。
普通、曲げ木といえばユーではなくビーチ(ブナ)ですよね。
それはなぜかというと、ビーチは豊富に入手が可能で量産に向いているからです。
商業主義的な考えを捨てて、本当に曲げ木にふさわしいのは何か、
つまり、割れなどを起こさず、粘りがあって、長期間弾力を保ち続けることができる材料は何か?
それは誰もが知るところでしょう、そう、「弓」の柄(え)に使われている材料です。
かつて、命を左右した戦闘道具は決して曲げ木の割れなど、許されませんでした。
だからこそ、弓にはユーウッドが使われていたのです。
ただし、エルムもユーも、大量に入手することは困難で、品質も安定せず、製造も容易ではありません。
ですから商業的な家具材としてはこれらの材料は全く不向きなのです。
しかし厳選された材で作ることのできる1点物ならば、話は違います。
エルム&ユー以外に勝るものはありません。
・・以上、あくまで、ヨーロッパという地域特性を加味してご理解くださいね。
相場的にはそれぞれのチェアの現状でのコンディションにもよりますし。
コンディションの点でいえば、こちらのチェアはほぼパーフェクトです。
永年大切に使われて、使われて・・人の手の摩擦で全ての角が取れた、丸い木肌。
決して人工的には再現ができない、100年もののアンティークだけが持つ、独特の質感。
長年、人の体重を支え続けながらも、ほとんど歪みを見せない屈強な躯体・・。
ホント、最高です。
まだまだアンティークワックスでまめに磨きこんだら、どんどんつやが深みを増していくことと思います!
古いウィンザーに良く指摘されますが、脚先が削れて短くなっていたり
アームレストにダメージがあったりすることもありません。
デザインはポピュラーな「二段」タイプのボウバック・ウィンザースタイルですが、
だからこそ、長い経験に基づいた座り居心地の良さがそこにあります。
硬い座面もお尻にフィットし、長時間座っても傷みを感じない”サドル・シート”、
極めて人間の着座姿勢に対し、的確な角度と位置に配置された”ダブルボウ”、
座り心地の安心感に直結する、芸術性と強度を兼ね備えた”カーヴィング・ストレッチャー”(脚をつなぐ補強材)・・。
まったく、お勧めできない理由はどこにもありません。
ぜひ次代へ引き継いでいただきたい、“コレクタブル・アンティーク(収集目的の骨董品)”です・・。
(Buyer/YM)
価格(税込):
149,040
円
参考市場価格:
144,900
円
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LOCKON CO.,LTD.