ベントウッドラウンドケインスツール

6つのリングで構成されたベントウッド(曲げ木)スツールです。
こちらはアメリカから輸入したヴィンテージ品になります。
単に珍しい、と言ってしまえばそれまでですが、
このスツールの存在は、そう単純なものではありません。
なぜなら、ベントウッドの本家・トーネットThonet社の歴史に大きくかかわっているスツールなのですから。
どういうことかというと・・つまり、トーネットであってトーネットでない会社が作った、ということです。
だって、そもそもトーネットを相当研究したデニムでさえ見たことのないベントウッドスツール、
というのは、よくよく考えてみれば、ちょっと変ではないでしょうか?
そう、自称ベントウッドマニア、我々デニムでもその存在を知らなかったスツールだったのです。
いえ、別に過信しているわけではないです。
もちろん、あまり日の当たらなかったモデルで、デニムが知らなかっただけかもしれません。
でもこんなユニークなカタチ、隠れたモデル、というにはちょっとインパクト強すぎではありませんか?
ということは、トーネット製ではない?
いや、製作当時は世界帝国トーネットの影響が残っていた時代。
トーネットに無関係な、極小のベントウッドメーカーが作れる代物とも思えません。
結論から言って、こちらのスツールは、アメリカで独立したトーネットの「分家」が製作したものではないかと思います。
第二次大戦前、トーネット(当時はトーネット・ムンドス社)を実質的に支配していたムンドス社のオーナー、
”レオポルド・ピルツェル” は、ポーランド系ユダヤ人だったため、ナチスの迫害から逃れるべく、アメリカに亡命します。
彼は、トーネット一族にトーネット商会の持ち株すべて売却することを条件に、
アメリカのトーネット3工場、および商品の商標権、製造・販売権をトーネット一族に要求、
そしてそれら一切の権利を一族から獲得しました。
つまり、アメリカのトーネットはここに完全に本社とは分離され、切り離されたアメリカのトーネットは
ピルツェル・トーネットの「アメリカ本社」となったのです。
そしてデニムでは、このスツールは、このピルツェル・トーネットで作られたのでは、と考えています。
ちなみにピルツェルの去ったトーネット・ムンドス社は、
再びゲブルダー・トーネット社として旧に復すこととなりますが、
第二次大戦後、ドイツの敗戦により、世界各国のトーネット支社・工場はそれぞれの国に分断・接収されることとなり、
アメリカ・トーネット同様、ポーランド・トーネットやチェコ・トーネット、オーストリア・トーネットなど、
それぞれの国のベントウッドメーカーとして社名を変え、独自の道を歩んで行くことになりました。
ということでこちらのスツールは、このような歴史を経て成立したアメリカ・トーネットの独自商品と思われます。
ヨーロッパのアンティークトーネットしか見ていなかったデニムですので
アメリカの独自商品は、残念ながら見落としておりました。
尚、現地情報によれば、こちらスツールは第二次大戦後、
アメリカ・トーネット初期のころに製作されたモデルということです。
確かに、手編みの篭目(かごめ)編みではなく、機械編みのはめ込み式ケインシート(籐座面)が
1940〜60年代のヴィンテージクラスであることを物語っています。
また、アメリカではヨーロッパ伝統のビーチ材(ぶな)がほとんど取れないため、
代わりにアッシュ材(とねりこ)が使われる事が多いようですが、
こちらそのように思われます。
歴史を知るアンティークベントウッドファンの方なら、ぜひ手に入れていただきたい
トーネット史の一里塚です・・。
(Buyer/YM)
価格(税込):
30,240
円
参考市場価格:
29,400
円
[9]かごを見る
[0]TOPページへ
LOCKON CO.,LTD.