エドワーディアン ベントウッドパネル ロッキングチェア

今から100年以上前、イギリスエドワーディアン期に製作された、スモールサイズのロッキングチェアです。
ベントウッドロッキングチェアに似た構造を持つ、珍しいマホガニー製のジェニンアンティーク(真の骨董)です。
・・アンティークらしい、20世紀初期のゆったりとしたリズムを感じさせるデザインですね。
でも、そんな情緒に訴えられるデザインではありますが、その一方で、
チェアの専門家としては、構造的な側面で、非常に興味を掻き立てられるチェアです。
どこが? といえば、座と背に使われている、こちらの一体型パネルデザイン。
今でこそ、”アルネ・ヤコブセン”のセブンチェアなどのように、座と背が一体になった
プライウッド(積層合板)のチェアは特に珍しいものではありませんが、
1900年当時、そんなデザインのチェアがあったとは、実は聞いたことがありません。
逆に今では、座と背が別々よりも、一体成形型の方が製造工程の短縮効果があり、量産家具に向いていますので、
世界的にはそちらのチェアのデザインの方が多いのではないかと思われます。
でも、この1900年当時では、ベントウッド(曲げ木)専業トップメーカーであるトーネットTHONET社ですら、
まだ、座と背が一体のチェアはカタログに載っていません。
それでは、このような座と背の一体成形型チェアはいつごろから普及するようになったのでしょう?
専門書を見る限り、一体型でもっとも有名な最古のチェアは、フィンランドの建築デザイナー、
”アルヴァ・アアルト”がデザインした、”パイミオ”というイージーチェア。
それでも、制作年は1931年となっています。
前述のセブンチェアや有名なアントチェアはもっと後年、1950年代にデザインされています。
一方、こちらのチェアは、ディーラー情報では1900年代。
デニムの推定では19世紀末の可能性もあると思われます。
これはどういうこと?
・・もしかして、こちらのロッキングチェアは、世界初の一体型パネルデザインなのでは?
いや、これはかなり高い確度で・・成形合板の一枚パネルで座と背の一体型デザインをもつロッキングチェアとしては
世界最古級のという可能性がある!、ということには間違いがないでしょう。
おぉ・・なんだかすごい、でしょ。
ちなみに一枚の成形合板で座と背が構成されている前述のパイミオは、
当時の画期的なデザインとして今では名作椅子の仲間入りを果たしていますが、
近年の専門書の評価としては、「弾力がありそうなパネル座面に見えるが、形状がフラットで固く、
決して良い座り心地ではない」とあります。
おそらくまだ成形合板の製造技術が今ほど進んでいなかったのでしょう。
でもこちらのチェア、確かに座は堅いのですが、それほど座り心地は悪くありません。
横方向はフラットでも縦方向は結構緩やかな曲面になっているからだと思います。
クッションなどを使えば、結構快適になることでしょう。
この点でも、アアルトの「名作椅子」よりも先を行っているようです。
ちょっと驚きですね。
パネルデザインでもある意味ではアアルト・デザインよりも進んでいるように思います。
今では見ることのできない、美しいホールアート。
尖塔型のゴシック様式をアールヌーヴォー調にアレンジしたかのようなデザインです。
パネルシートは、スタッズ(太鼓鋲)でフレームにしっかりと固定されていて、
まだプライウッド(成形)の品質レベルが安定していない時代だったことを示しているようですが、
そんな反り止めの補強処理すら、デザインのアクセントになっているようで、グッドです。
今でも当時の状態をしっかりと維持している、初期のプライウッドですから、
フレーム設計の良さが際立って高いことがうかがわれます。
そのフレームには素材に高級材マホガニーが使われ、デザインは古典的なウィンザー風、と、
この点では、旧式なデザインであることは否めませんが、そんな品質に裏打ちされた伝統デザインだからこそ、
このような設計精度の高さが実現できたのでしょう。
一体、どこの誰が、このような画期的なロッキングチェアをデザインしたのか、
ぜひ明らかにして見たいです・・。
座面が低くしているところを見るとナースチェアのような使われ方をされていたのでは?
と想像しておりますが、21世紀の現代でもイージーチェアとしては十分にお役に立てそうな椅子です。
見ているだけで心が踊る、本当にホットなロッキングチェアです。
ぜひ、椅子マニアの方に・・。
(Buyer/SD)
価格(税込):
64,800
円
参考市場価格:
63,000
円
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LOCKON CO.,LTD.