ヴィクトリアン タペストリーポールスクリーン


今から1世紀半ほど前、19世紀後半のレイトヴィクトリアンに製作された、
ソリッド・ウォルナットのポールスクリーンです。
英国アンティークのコレクティング・ファニチャーを代表する逸品になります。

アンティークで取引される“スクリーン”について少し解説させていただきますが、
スクリーンには、ファイヤースクリーン、フォールディングスクリーン、ポールスクリーン、
トライポッドスクリーン、そしてこのトリポッド型ポールスクリーンなど、
いくつかのタイプが存在しています。

いずれも暖炉の火の粉やすきま風をさえぎったりするために生まれた機能家具ですが、
時代が進むにつれてその機能性は徐々に低下し、お部屋の空間を魅力的に飾るためのインテリアとして、
そのデザイン性だけがどんどん特化して行くようになりました。

そしてヴィクトリアンの末期にはファイヤースペース(居間)において、
メインのインテリア・アイテムとされるほど、その人気はピークを迎えることとなり、
第一次大戦前後までは、そんな貴族趣味の人気傾向が続いていたようでした。

コレクションしていた当時の富裕層の人たちの関心は、もっぱらそのパネルデザインの豪華さ。

特に、フォールディングスクリーンなど、もともと日本や東洋の「屏風」などの影響もあったのでしょうか、
いわゆる「金屏風」のようなシノワズリー風の絵画や漆の絵画など、
「家具」というよりも「芸術品」に近い作品が大いにもてはやされました。

あるいは刺繍のシルクパネルや、“パピエ・マーシュ”と呼ばれる塗装技術など、
様々な技法や素材をも駆使し、スクリーンはもはや美術品であるかのごとく、変貌していったのです。

そんな見るもあでやかな、そのような当時の高級調度品、ファイヤースクリーンですが、
その一方で、こちらはちょっとめずらしい、パステルトーンの刺しゅう柄がかわいらしい庶民好みのアイテム。

でも、全て刺繍でこれだけの細かい「静物画」を描写するのは大変なこと。

そう、正確に申し上げますと、こちらはとても手間のかかった高級織物、タペストリーTapestryです。

それも、現代的なニードルポイント(大きな織目の刺繍)のようなタペストリーではなく、
ゴブラン織りと同様の製織技術を用い、ハンドメイドで織り上げた、
ヨーロッパの伝統的な工芸品になります。
オーストリアの”プチポワン”も同種の工芸品です。

当時タペストリーは、優れた画家が下絵を描き、それを織物職人が手織りして仕上げる、という
分業工程を経て生まれる、一種のアートでした。

絵画レベルに匹敵する芸術品として扱われていましたので、室内を装飾するインテリアとしては、
王侯貴族たちに大変好まれたということです。

タペストリーに使われるするコットンやウールという織り糸は、一般的に温かみを感じる素材ですので、
暖炉の部屋に置くファイヤースクリーンの装飾に使われるようになったのはごく自然なことだったのでしょう。

実際、ファイヤースクリーンにタペストリーが飾られているアイテムは少なくありません。

そんないかにも貴族趣味的なタペストリー装飾のポールスクリーンですが、
こちらには全く、そんな高級調度品を鼻にかけたような趣味の悪さはありません。

むしろ現代にも通じるセンスの良さを感じます。

そしてその華麗なルックスを、1世紀半を経た今でも、端正に保持し続けているのは、
アンティークの時代ならではの希少な銘木、スパニッシュマホガニー。

これだけ華奢な総無垢のフォルムが、全く変形を起こしていない、などという事実は、
一種の奇跡のようにさえ思われます。

しかも素材の良さだけではありません。

もっとも長期の自立が難しいとされるハの字型の3本脚、”トライポッド”(1本柱3本脚)を
今なおしっかりと垂直に維持させている製作精度の高さは、
まさにハンドメイドの家具が最も技術的にピークを迎えていた時代の家具ならでは、と思います。

スパニッシュマホガニー製のフレームに、
大切にガラスケースでパッキングされたStill Life(静物画)のタペストリー。

「豪華絢爛」が主流だった当時のコレクション的なスクリーンよりも、
こちらのほんわりとした優しいルックスが、
きっとオーナーにとっては何よりも代えがたい「美術品」だったことでしょう。

英国の歴史的な世相、そしてそこに生きた人の芸術観さえも身にまとった、
素晴らしきコレクタブルズ(収集目的の骨董品)。

それがこちらのポールスクリーンです・・。

(Buyer/YM)



価格(税込): 113,400 円
参考市場価格: 110,250 円
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