エドワーディアン マホガニーファイヤースクリーン

イギリス20世紀初頭、エドワーディアンの時代に作られたマホガニーファイヤースクリーンです。
今から100年以上前のジェニンアンティーク(真の骨董)です。
・・もともとファイヤースクリーンは暖炉の前に置いて、
もともとは火の粉の散乱を防いだり、隙間風を遮断するためのツール、生活用品でした。
それが時代とともに装飾性が強くなっていき、貴族たちの間では、
あたかもその家庭のステイタスシンボルでもあるかのように、その人気は過熱。
そもそも暖炉のあるお部屋は、そのご邸宅の中でお客様をもてなす最高のお部屋ですから、
より一層、豪華に、魅力的に、そしてお客様の関心を誘えるだけの奇抜さが求められていきました。
人気のピークは19世紀末から20世紀初めころと言われています。
ちょうどこちらのスクリーンが作られたと思われる頃ですね。
それが、暖房器具の発達し始めた近代以降では、人々の関心は徐々に遠ざかっていきます。
スクリーンはパーテーションのように、ちょっとしたインテリアの「目隠し」などとして使われることが多くなり、
アンティークインテリアとなった現代では、純粋なお部屋の空間アクセントになりました・・。
前置きが長くなりましたが、そうした人類の生活様式の歴史の中で生まれ、
また時代の流れとともに衰退したファイヤースクリーン。
しかしながら、かつてインテリアの流行の中で一世を風靡した、貴族たちの豪華な調度品だけあって、
今見ても、家具や生活用品、というよりも美術品とか芸術品に近いクオリティです。
従って、アンティークコレクターたちが常に探し求めているコレクタブルズになります。
確かにこれ以上に存在感のあるインテリアのアクセントはありませんね。
ということで、こちらはそんなファイヤースクリーンの歴史の中で、ピークの時代に作られたと思われるお品。
キメの細かい銘木級ソリッドマホガニー製のフレームは、限界まで細くシェイプされ、
まだヴィクトリアンの影響が色濃く残る、人気の”チャイニーズチッペンデール”デザインが踏襲されています。
”アールヌーヴォー”がもてはやされ、「東洋趣味」が流行していた当時としては、
最先端のデザインだったことと思います。
でも・・アンティークファンの方、というより「日本人」ならわかりますよね。
フレームは”シノワズリ”(中国趣味)、でも、そのフレームに収められているアンティークらしい「布絵」は、
どう見ても日本製、”ジャポネズリ”(日本趣味)。
要するに、当時の西欧の人たちは、中国も日本も、同じにとらえていたことが分かります。
いわゆるオリエンタル=東洋趣味として、中東、インドも含め、彼らには西欧以外の国の区別はなかったのでしょう。
実際17世紀、シノワズリが流行したころは、日本文化もヨーロッパに紹介されていたようですが、
あくまでシノワズリの一部としてしか、理解はされていなかったようです。
要するに、シノワズリは一時的なデザイン上の流行だった、というわけです。
ただ、その後、19世紀後半には、開国した日本の文化を、明治政府が国策として西欧にアピールしたことが功を奏し、
西欧の文化人たちの間で、”ジャポニスム”(日本主義)という、当時の日本観が広まりました。
ジャポニスムはジャポネズリのような一過性のデザイン観ではなく、考え方というか、思想論。
西欧とは違う日本的な自然観が、著名な芸術家や画家たちによって紹介されることで、
ジャポニスムは芸術上の大きなうねりとなりました。
このジャポニスムが19世紀末に流行したアールヌーヴォーに大きく影響を与えることになるのです。
アールヌーヴォー(新芸術)といえば、ご存知の通り、数千年に渡った古典主義的な芸術観を覆した、
近代デザインの重要な出発点。
要するに、日本人の「花や鳥を愛する「わび」「さび」の心が、
ヨーロッパの人たちのデザイン観を変えるきっかけになっていたのです。
・・が、しかし!
それもゴッホやマネ、モネなど、時代の最先端にいた芸術家だけが理解していたことだったのでしょう。
一般の人たちにとって、「日本観」など、全く縁のないことだったに違いありません。
その証拠がこのスクリーン。
”ファイヤースクリーン”という流行のアイテムに、旧来から人気のあるチッペンデールデザインという
古典デザインを採用し、そこに新しく流行してきた”ジャポニスム”テイストを取り入れた・・、
そんな状況が手に取るようにわかります。
・・とはいえ、逆に考えれば、私たちにとっては非常に重要な歴史的資料。
たった一つの、名の知れないアンティークアイテムですが、これだけ多くの人類史を語ってくれる、
こちらのファイヤースクリーン、まさに人類の生活文化遺産と思います。
決して失ってはならない、次代へ引き継いでいくべき歴史の一里塚です。
こちらの布絵は雰囲気から見て、製作された当時の状態のまま保存されているように思います。
100年前の木綿製、日本の伝統工芸「注染(ちゅうせん)」の染め物ではないかと思います。
朱印などがあり、名のありそうな染もの屋さんの作品のようにも見えますが、詳細は不明です。
年代からすると、明治のころ、日本からイギリスへ輸入されたものだったことでしょう。
少なくとも、この時代にこのような輸入品を手にできた階級は、かなりの富裕層だったこととは想像できます。
きっと、当時の日本の染め物の中でも、厳選された大変貴重なお品だったことでしょう。
フレームは見た目でも充分にご判断いただけると思いますが、非常に質の良いマホガニーが使用され、
伝統技術に基づいて製作された良質のアンティーク家具です。
明らかに近代に見かけるマホガニー材とは質を異にする素材感。
植民地時代のスパニッシュマホガニー、あるいはそれと同等クラスの銘木マホガニーと思われます。
フレームには良いアンティークだけが持つ、質感、色艶もあります。
エントランスやリビングにおけば、一瞬にして、その空間が格調高い雰囲気に引き締まります。
これぞ、時代を映した「鏡」のような、真のアンティーク。
ぜひ、アンティーク上級者の方にお勧めいたします・・。
(Buyer/YM)
価格(税込):
118,800
円
参考市場価格:
115,500
円
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