アールデコスタイル オークスチールケーキスタンド

今から70〜80年ほど前、アールデコのころに作られた古いイギリス製のケーキスタンドです。
アンティークでは珍しい、ウッド×スチール製のハイブリッド仕様です。
ああ、なるほど。
そういうことだったんですね・・。
アンティークファンの方ならお気づきでしょう、
ケーキスタンドといえば、アンティークは一般的に総天然木製ですね。
それに対して現代品はスチールフレームに陶器のお皿が乗った実用仕様がポピュラーです。
なんとなく、時代とともに天然素材から人工素材に切り替わったんだな、と気にも留めていなかったのですが、
このトレーを見てピンときました。
いきなり切り替わったわけではなかったんですね。
たしかに、天然木無垢製だと、構造の複雑な家具なので、長く使っていると歪んでがたつきやぐらつきが出てきます。
もちろん、無垢の家具ならば直しながら長く使うことができるのですが、スチールフレームであれば、
長期間メンテナンスフリーで使い続けることができます。
ちょうど、この時期、アールデコの時代は家具の分野でも、スチールフレームの椅子などが作られ始めた時期でした。
家具デザイナーが華やかなりし時代でしたので、家具の華、ケーキスタンドのデザインにも、椅子の実績を見て、
スチールを素材にを取り入れるデザイナーが現れたとしても、何ら不思議ではないですね。
そこでまず、最も疲労しやすい外枠の部分に、このようにスチールを取り入れたのでしょう。
しかも単なるスチールフレームではなく、装飾性を考慮して表面にはクロムメッキが施されています。
今でも水道のパイプなどに使われているのでおなじみですね、そう、耐水性が高いめっきです。
クロムメッキは傷にも強いので、長期間きれいな状態を維持しやすいです。
当時はまだ、それほど普及しているめっき法ではなかったと思われますから、
この時期としては最先端のテクノロジーだったことと思います。
つまり、それなりの規模を持つ家具メーカーが作ったものであることが想像できます。
ただ、まだまだデザインとしてはクラシカルな過去のイメージは残す必要があったのでしょう、
一枚板のオーク無垢製トレーは、そんな一足飛びにデザインを変えられない、
当時のデザイナーたちの保守志向も反映しているように見えます。
しかも材は良質でなければならない、柾目の虎斑杢(とらふもく。トラ柄の杢目)が出ていなければならない、
無垢削り出しの構成でなければならない・・。
などなど、過去の常識の枠も簡単には超えられなかったということなのでしょう。
まあ、そうかもしれませんが、逆に言えば、そんな家具製作の原理原則をかたくなに守り続ける
クラフトマンシップが、当時のデザイナーたちにもしっかり根付いていた、と言えるのかもしれません。
しかし、ほどなくして、多くの方がご存知のように、天然木トレー×スチールフレーム構造が、
陶器トレー×スチールフレーム構造へと主流が変わっていきました。
生産効率、耐久性などを考えれば、自然な帰結と言えるでしょう。
でも、そこに至るまでにはきっと、誰も知ることの無い、多くの試行錯誤、また人間ドラマがあったことと思います。
そんな・・「ものづくり」ということに対して、とても深く考えさせられたアンティークアイテムでした。
コレクションというよりも、歴史が凝縮した「一里塚」といった方が良いですかね?
いえ、きっと製作者は、長く使ってほしかったのだと思いますよ。
半世紀以上の時が経過しても、こちらのケーキスタンドはきっちり動き、しっかりと接地します。
オークトレーは良い歳月を経て、素敵な風合いが出てきています。
あたかもこちらのケーキスタンドは、鑑賞するものではなく、使用するものですよ、と訴えているかのようです・・。
(Buyer/YM)
価格(税込):
35,750
円
参考市場価格:
34,125
円
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LOCKON CO.,LTD.