和骨董WA-COTTOO SHOWA-RETROスタイル ブラックレザードクターチェア


デニムの和骨董企画パートU、SHOWA-RETRO編の追加アイテムです。

こちらは骨董ファンのお客様より入手しましたメイドインジャパンのデスクチェアです。
昭和中期のものということで入荷してきました。
今から半世紀ほど前に作られたもの、ということになります。

・・いつもちょっと気になっていたことがありました。
それはこちらのような、「回転椅子」の呼び名。

そもそも家具には様々な種類があって、固有名詞にせよ一般名詞にせよ、あるいは俗称にせよ、
それぞれ、その家具を表す呼び名があります。

例えば、家具の中でももっとも種類の多い”テーブル”について想像してみてください。

ダイニングテーブルといえばちょっと大きめのテーブルを指しますし、
コーヒーテーブルといえば背が低いテーブルを思い浮かべますよね。
「○○テーブル」といえば、まあ、人それぞれ多少の違いはあっても、
大体、似たようなテーブルのカタチを思い浮かべるのではないでしょうか?

「椅子」も家具の一つにあたりますので、「○○チェア」といえば、
おおよそ似たような椅子をイメージされることと思います。

ところが・・。
こちらのような、「回転軸がついていたりキャスターがついている回転する椅子」は、
一般的に何と呼びますか?

回転椅子?
まあ、それはそうですが、「回転椅子」というと、中には ”スツール”をイメージされる方もいますよね、
背のないタイプの。

あるいは、木製だったりスチール製だったり、キャスターがついていたりいなかったり、
また肘掛けがあったりなかったり・・。
「回転椅子」というと、10人いたら10通りの椅子のカタチを思い浮かべるのではないでしょうか?

要するに、「回転椅子」とはものすごく大雑把な呼び方です。

テーブルの場合は、家具>テーブル>○○テーブル・・と絞り込めてしまうのですが、
回転椅子の場合には、家具>椅子>回転椅子・・だけではカタチを特定できないので、
その先のもう一つ、カタチを絞り込む呼び名が必要なのです。

例えば、「回転椅子」の先にどんな呼び名があるかといえば、
事務椅子、デスクチェア、オフィスチェア・・くらいかな、他にありますか?

でもどれも、あいまいな呼び名ですね。

「事務椅子」といえば事務をする椅子のことだし、”デスクチェア”も単に机に合わせられる椅子のこと。
”オフィスチェア”などは、使われている場所を指しているだけで、
どれも「回転椅子」だけがそう呼ばれるわけではありませんよね?

つまり、「回転軸がついていたりキャスターがついている回転する椅子」には決まった名前がないのです。

・・まあ、普通の人にはどうでも良い話なので、長々とお話しすることでもないのですが、
ただ、専門家としては、呼び名を決める場合に、こちらのタイプの椅子だけが決まった名前がないので、
実はいつも困っていたのです。

それでは海外ではどうかというと?

英語圏で「回転椅子」は ”スウィベルチェアswivel chair”(回転する椅子)ですが、
やっぱりそのイメージはあいまいのようです。

でも、スウィベルチェアの先、形をイメージさせる「椅子の呼び名」については、
日本と違ってとても多いのですよね。

日本同様、office chair、desk chair、work chairなどとあいまいに呼ぶケースもありますが、
主に使う人や用途を指して、カタチをイメージさせるケースが多いようです。

例えば、古くは、キャプテンチェアcaptains chair、ライブラリーlibrary chairなどから始まり、
バリスターチェアbarrister chair(弁護士の椅子)やロウヤーズチェアlawyers chair(同左)、
あるいはバンカーズチェアbankers chairなど、特定の職業に使っている椅子をイメージする呼び名があり、
また近年では、ドラフティングチェアdrafting chair(製図椅子)、コンピュータチェアcomputer chair、
はたまた、ディレクターズチェアdirectors chair、エグゼクティブチェアexecutive chairなど、
新しいカタチをイメージさせる呼び名も増えてきています。

これだけあると、欧米ではある程度、「回転椅子」のカタチをイメージすることはできますね。 

それに対して日本の回転椅子の呼び名が少ないのは、日本の椅子の歴史が浅いことと関係があるのかもしれません。

色々と諸説はありますが、日本で西欧式の生活スタイル、すなわち椅子に座って食事をしたり、
勉強をしたりするようになったのは、まだ明治半ば以降のころのこと。
一般的な日本の家庭生活にまで広く普及するようになったのは、戦後の高度経済成長期、
1954年(昭和29年)から1973年(昭和48年)のころではないかと言われているくらいですからね。

世界では数千年の歴史があるにもかかわらず、日本ではまだ数十年程度。
これでは、呼び名がないのも当然かもしれません。

唯一の例外が、こちらの”ドクターチェア”。
レトロな木製の回転椅子を、なぜかこれだけ特別に、日本では一般的にドクターチェアと呼んでいます。

でも、これって日本だけの呼び方?

英語圏の家具屋さんが "Doctor chair"なんて呼んでいるのは、あまり聞いたことはないですよね。
意味は通じるかもしれませんけど。

デンティストチェアdentist chair(歯医者の椅子)という呼び名なら一般に聞かれますが、
カタチがまるで違う椅子です。

おそらく、明治から大正、昭和初期にかけて、日本では ”エグゼクティブチェアexecutive chair”の意味で
当時の木製の回転椅子を ”ドクターチェア”と呼んでいたのでしょう。

身近にいた尊敬べき先生たちの椅子、いうことです。

「先生」とは例えば、「お医者様」をはじめ、学校や大学の「先生」、
「弁護士」などの士業の先生たち、あるいは地方議員の政治家の先生・・。

多くの「先生」たちはこちらのような「回転椅子」をデスクワークに使っていたのでしょう。

「椅子の文化」を持たなかった日本人が初めて知った、「椅子」の持つ「権威の象徴」性。
ドクターチェアは文字通り、当時の日本人たちにとって、「偉い人」のシンボルだったに違いありません。

そして当然、ドクターチェアを製作する側(家具メーカー)にとっても、特別な椅子、すなわち、
そのメーカーの威信をかけて作るべき椅子だったことは容易に想像できます。

このドクターチェアを見てください。
ヨーロッパのアンティークチェアと見比べて、遜色ありますか?

数十年の歴史しか持たない国の家具メーカーが、
数千年の歴史を持つ国の家具メーカーに匹敵する椅子を作っていたのです。

どれほどその製作に当時の日本の家具職人たちが尽力したのか、
彼らのプライドをかけた戦いが、目をつむれば脳裏に浮かんでくるようです。

デザインだって、当時のヨーロッパを席巻したアールデコArt deco様式。
当時の最先端だったはずです。

21世紀の今となっても、レトロモダンでなかなかのもの。
イギリスのクラシカルなインテリアの中にあっても、決して不釣り合いではありませんよ。
フランスのシャビーなアンティークにだって良く馴染みそうです。

そして何より、「桐箪笥」に見られるような設計精度の高さが、日本の家具の最大の長所。

その構造の確かさが、無垢の家具ながら、半世紀以上もの間、端正なフォルムを保ち続けています。
また、メンテナンス性の良い構造設計になっているので、何度も再生され、今に至っているのかもしれません。

「いつかきっと追いついてみせる」

昔の日本の家具職人たちのモノづくりの心意気がうかがわれるような、率直にりっぱなデスクチェアと思います。
何だか同じ日本人として、ちょっとうれしくなりますね。

大きな存在感を持ちながらも、自然で飾り気のないデザインは、
奥ゆかしさを尊ぶ日本人ならではの創造性。

日本のモノづくりのルーツとして、ぜひお孫さんの代まで引き継いでいっていただきたいものです。

素晴らしき日本のクラフトマンシップに満ちた、ジャパニーズ ”SHOWA-RETRO”デスクチェア、
アンティーク上級者の方のインテリアコレクションに、ぜひ・・。

(Buyer/YM)



価格(税込): 47,520 円
参考市場価格: 46,200 円
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