Muller Freres アールヌーヴォースタイル アートガラステーブルランプ


フランス・アールヌーヴォースタイルのアートガラスランプになります。
こちらは1920年代に製作されたと思われるミューラー兄弟の作品になります。

※こちらは照明器具一式つきの商品です。
※サンプルとして電球をお付けいたします。


19世紀末期、アールヌーヴォーデザインが時代のトレンドとして華やかなりしころ。

フランス・ナンシーの地には新しいデザインと革新的な技術がもたらされていました。
そう、後年”ナンシー派”と呼ばれることになった、芸術グループの活動です。

アールヌーヴォーデザインとして中心的存在だった、そのナンシー派の中でも、
とりわけ大きな成功を収めたのが、ガラス工芸、陶器、木工家具のデザイナーとして有名な、
シャルル・マルタン・エミール・ガレCharles Martin mile Gall 18461904)でした。

アール・ヌーヴォー全盛の時代には、このガレを筆頭に、ガラス工芸のドーム兄弟、
高級家具師のルイ・マジョレルLouis Majorelle(1859-1926)、
画家のヴィクトール・プルーヴェVictor Prouv(1858-1943)らがナンシー派のメンバーとして名を連ね、
ナンシー発の装飾芸術の振興に尽くしていました。

そんなナンシー派アール・ヌーヴォーの立役者であり、商業的にも大成功を収めたガレのもとへ、
弟子入りしたのが、こちらの作品の製作者、ミューラー兄弟Muller Freres(1895〜1936)です。

兄弟といっても2人や3人の現代感覚と違って、男9人と女1人という総勢10人の大兄弟。

もともとモーゼル地方に生まれた彼らは、身近なサン・ルイガラス工場で働いていましたが、
普仏戦争(1870〜1871年)でナンシーに近いリュネヴィル (Lunville)に疎開することになり、
その後、10人中5人がナンシーのエミール・ガレの工房で働くことになりました。

そうしてガレの技法や作品の様式を学びとったミューラー兄弟は、
独立心の強かった三男のアンリが、デジレ、ユージーンをつれてほどなく独立。
1895年、リュネヴィルに工房を開きます。

後発のガラス工房でありながら、優秀なガラス工房のひしめき合うナンシーエリアで、
めきめきと頭角を現すミューラー兄弟。

その理由はナンシーの他のガラス職人にはない高い独自性。

例えば、幾重ものガラス層を重ねる技法、特別な彫刻技法など、すでに新鋭の彼らの技術は
古くからのナンシーの職人たちをはるかにしのぐクオリティを身に着けていたのでした。

色彩とグラデーションを極め、あらゆる工房の多種多様な技法を取り入れた優れたミューラー兄弟の作品は
明らかに工業製品ではなく、芸術作品。

あくなき技術への探究心を持ち、完璧を求め続けるミューラー兄弟の工房は大きく発展し、
その後、他の兄弟達も次々と工房に帰還するなど、一家一団となって工房を経営するようになりました。

そのように、順調に所業を発展させたミュラー兄弟ですが、
1914年、第一次世界大戦により大きく人生が方向転換します。

彼らのすべての工場は戦争に転用されるか、閉鎖され、廃墟と化してしまいました。

今まで積み重ねてきた全てを失ったミューラー兄弟。

アンリが再起を決意したのは1919年のことでした。
創業の地、リュネヴィルにて、再びミュラー兄弟のガラス工房、
”La Verrerie d’Art Muller Freres”(ミューラー兄弟のガラス工房)を立ち上げます。

そしてリュネヴィルと同じロレーヌ地方のクロワマールというところにあったガラス工場を買収し、
ガラス製品やクリスタル製品を製作する近代的設備の工場につくりかえました。

翌年の1920年にはクロワマールの工場で、復帰第一号の作品が製作されました。
作品には”Grande Verrerie de Croismare”(クロワマール産の高級ガラス製品)とサインが記されます。

リュネヴィルの工房で製作されたミューラー兄弟の作品には、”MULLER FRES LUNEVILLE”と、すでに
1919年より記されていましたが、クロワマール工場の作品にはミューラーの名前は入っていません。

すなわち土地の名前を付けることで、彼らが以前のような家族工房ではなく、
この工場を地域の中で発展させ、社会に貢献していこうとした意思が読み取れます。

・・と、余談が長くなってしまいましたが、こちらの作品に光りを灯すと、ぽっ、と浮かび上がるロゴ、
”G.V. de Croismare”には、そのような経緯があったことをお伝えしたくて、ここまで引っ張ってしまいました。
長文失礼いたしました。

尚、こちらのサインは1930年代まで使用されていた、ということですので、こちらの作品についても、
製造年代については時代考証は不要ですね。
ちなみにリュネヴィルの方のサインについては、1950年代ごろまで使われていた、ということです。

第一次大戦以前の古いミューラー兄弟の作品は、ガレの作品のように全てにサインが共通の書体で
入っているわけではないのでわかりにくいのですが、戦後の作品にはサインがあり、
特に生産地でも分かれてもいますので、その真贋がつかみやすくなっています。

いずれにしても、ミューラー兄弟の作品であれば、どちらの工房での作品にせよ、
非常に高度な職人技術でつくられていることに違いはありません。

マニア的に言えば、ガラスに溶かし込む色数はクロワマール工場の作品が多いのではないか、ということです。

さて、こちらの作品について、そんなミューラー兄弟のクロワマール工場で作られた作品の一つ。

もちろん、左右非対称であったりする点で、製作精度はハンドメイドなりですが、
だからこそ、このようなアートガラスをアイアンパーツで連結した、
見事なフォルムの釣鐘型ランプが製作できてしまうことに、本当に驚かされます。

また透かしこみガラスmottled glassらしい、オレンジ&パープルのスウェル(波文様)という色彩感覚も素晴らしい。

いかにもアールヌーヴォーらしい、植物の蔦をモチーフにしたフレームと蕾のようなガラスシェードデザインは
その製作技術とともに、全く芸術品クラスの卓越したデザイン感覚です。

再起を目指すアンリ・ミュラーが、1920ネ年代、自身の人生をかけて世に送り出した意欲作、とデニムでは想像しています。

・・「モノづくり日本」に住む私たちにも共感できる部分の多い、西欧のガラス職人たちの人生。

その歴史をご理解いただいた上で、一生もののアールヌーヴォーランプをお探しのアンティークファンの方。
こちらのランプを受け継いでいただけることをお待ちしております・・。

(Buyer/YM)



価格(税込): 36,720 円
参考市場価格: 35,700 円
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