サンダーランドSunderland ピンクラスタージャグ

今から100年ほど前、19世紀末から20世紀初め頃にイギリスで製作された、ピンクラスターのジャグです。
陶磁器で有名なイングランド北東部のサンダーランドの伝統工芸品になります。
”サンダーランドSunderland”は、イギリス・タインアンドウィア州にある港湾都市。
日本ではサッカーチーム、サンダーランドFCで、その地名は知られていますね。
古くは炭坑や造船業などで栄えた古都でしたが、今では工業都市といったイメージです。
日本のメーカーでは日産などが工場をおいています。
そんなサンダーランドですが、一方では、17世紀ごろからガラスや陶芸の産地としても有名でした。
中でも当地の名品、”Sunderland Pottery”としてフラッグシップの陶磁器は、「ラスター彩」と呼ばれる半磁器。
9世紀、西アジアの古代ペルシアで生まれた史上最高の陶芸、「ラスター彩」の技術を受け継いだ工芸品です。
「ラスター彩」自体は世界各地に広まっていて、日本にも伝承者はいらっしゃいます。
「人間国宝」加藤卓男氏です。
加藤氏は古代ペルシャの古陶に魅せられ、日本独自のラスター彩を創出した第一人者で、
英国サンダーランドとも技術交流をもっています。
・・と、話が横道にそれ始めてしまいましたので、この辺にしておきますが、
こちらはそんな折り紙付きのサンダーランドポッテリー(陶器)の一つ、
人気ではトップランナーの ”ピンクラスターPink Luster”です。
サンダーランドの陶器といえば”ピンクラスター”、というほどの代名詞的な陶芸品。
恐らくボーンチャイナの影響と思いますが、
何らかのストーリーや時代のトレンドなどを取り入れた絵柄の描写が多く、
19世紀にはかなり流行したそうです。
そのモチーフとなったテーマについては、星の数ほどありますが、
それらのすべてに共通していたのは、このゴールドピンクのアクセント。
この独特の色彩が、サンダーランド固有のカラーとして広く知られることとなり、
ピンクラスターとサンダーランドポッテリーがあたかも同義語のように伝えられていったそうです。
ちなみにもう一つ、サンダーランドポッテリーの特徴といえば、陶器と磁器の中間的な、半磁器であること。
もちろんすべてが半磁器というわけではないでしょうし、こちらのお品も半磁器と確認できたわけではありませんが、
地域性としてカオリンの配合が強く、陶器よりも磁器に近かったことは確かなようです。
半磁器は、少しアイボリーがかった白い素地で、やきものの本焼成温度としては低めの1200〜1250℃で焼かれるため、
絵付けや色釉薬の顔料の発色がよく、色彩豊かな表現ができるのが特長。
そのため、このような鮮やかな絵柄の描写が多いわけですね。
こちらも半磁器と思われ、外側に絵柄が鮮やかな色彩で描かれています。
片側には川沿い(?)に立つ大きなカントリーエステート(田園の邸宅)。
一方、その反対面には若く身なりの良い男女が、犬とともに田園風景の中に描かれています。
いずれも豊かになったイギリス・ヴィクトリア期のワンシーンと思われます。
おそらくは、19世紀の植民地間との貿易が盛んだった時代の、変わりゆく時代の世相を表現したものと思われ、
富裕層の生活水準の向上が暗示されているのではないかと思われます。
こちらのような工芸品には、芸術作品のように製作者の主張が盛り込まれることも多く、
またそのような作品には、当時の一般市民の様子や、社会状況などがが描写されているはずですので、
歴史性を鑑みて、その描写を読み取っていただくと興味深いかと思います。
配色は、サンダーランドならではのピンクラスター。
英国の古典デザインらしく、注ぎ口の部分に人物面が入っています。
状態はとてもよく、1世紀以上もの歳月が経過しているとは思えないほどです。
もちろんミルクジャグなどとして実用的にお使いいただくことも可能ですが、
基本的にはアンティークコレクションとしてご理解いただければ、と思います。
イギリスアンティークファンの方に、ぜひおひとつ・・。
(Buyer/YM)
価格(税込):
17,280
円
参考市場価格:
16,800
円
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