AC0298 チェコ 2010年代 トンTON ベントウッドアームチェア No4 カフェダウムCafe DAUM/321
サイズ |
幅 500mm 奥行 595mm 高さ 870mm 座面高 445mm 肘掛高 660mm 座面奥行 430mm 座枠高 465mm ※ 詳しいサイズは、こちら |
アンティーク家具・照明の専門店「デニム アンティーク ファニチャー」へようこそ!当店ではチェアやテーブル、キャビネットなどのイギリス(英国)アンティーク家具やランプ、シャンデリアなどのフランスアンティーク照明を低価格と安心品質で全国へお届けしております。
Outline/商品の概要(仕入担当者からのコメント)
150年以上の歴史をもつトーネットファミリーのベントウッドチェアNo4カフェダウムです。
“トーネットのベントウッド”については、デニムサイトでもたびたびご紹介してますし、
世界中のさまざまなお店やサイトでも詳しく解説されてますので、すでにご存知の方も多いことと思います。
でもご存じない方のために、一通りの概要を説明させていただきますね。
ここまで知っていただければ充分な”トーネット・マニア”です。(笑)
ご存知の方はさっと読み飛ばしてください。
まず、”ベントウッド”とは「木を曲げる」ということ、
そして”トーネット”とはその「曲げ木」でつくった家具のメーカー、”ゲブルダー・トーネット商会”の呼称です。
”トーネット”社は今から約200年前、1819年ミヒャエル・トーネットがドイツのボッパルトに興した小さな家具工場、
「ミヒャエル・トーネット商会」からスタートします。
当時、家具は木を「切る」「削る」という工程を経て製作されるのが常識でしたが、
ミヒャエル・トーネットは木を「曲げる」という技術に着目。
「曲げた木」による斬新なデザインの家具を考案して、産物品評会などで次第に注目を浴びるようになります。
そしてトーネットの家具は、幸運にもオーストリアの時の権力者、”メッテルニヒ”の目にとまります。
それがきっかけとなり、家具の歴史は完全にミヒャエル・トーネットを中心に回り始めます。
以前から彼が大きな可能性を信じ、すべてをかけてきた「曲げ木」という技術。
しかしそれまで何度もヨーロッパ各国で特許を申請したものの、どの国でも見向きもされませんでした。
ところが1842年、メッテルニヒ候の信頼を受けたことでオーストリア政府は彼に「曲げ木」の独占的特許を与えたのです。
それ以前、曲げ木の研究で多額の負債を抱えていたトーネットでしたが、
やはりメッテルニヒ候の口添えでウィーンの有力な貴族の宮殿の家具の製作を受注するなど、経済状態も好転、
製造工場の環境も良くなり、ミヒャエル・トーネットは、前にもまして
曲げ木家具の研究開発にいそしむことができるようになりました。
そしてそれ以降、トーネット社は着実に発展していくことになります。
そして最終的には世界中に支部をもつ前人未到の「世界帝国」と称されるまでに登りつめることになるのですが、
実は、社業の爆発的な発展には、メッテルニヒとの出会い以外にもう一つ、
ミヒャエル・トーネットの人生を変えた重要な出会いがありました。
それは・・そう、トーネットファンの方ならご存知、ウィーン市内のコートマルクトにある”カフェ・ダウム”のオーナー、
ダウム夫人との出会いです。
ダウム夫人は、1850年、オーストリアの商工業組合の展示会でトーネットの椅子を知り、
店の椅子をトーネットに発注したのです。
当時のメジャーな社交場、”カフェ・ダウム”で初めて世間にデビューしたトーネットの「曲げ木椅子」。
ウィーンで大きな話題となったこの斬新な椅子は、このカフェ・ダウムの注文を皮切りに、
プタペストのホテルへNo4を400脚納品するなど、次々とトーネット社へ注文が入って行きました。
この時、カフェ・ダウムに納品した椅子は、トーネットの曲げ木椅子として4番目の開発モデルでした。
そこでこの椅子は、後に世間では”No4”「ダウムの椅子」と呼ばれることになります。
さて、No4ダウムの成功で、ミヒャエル・トーネットはさらに「曲げ木」技術の研究に没頭します。
普通、「職人」でも事業に成功すると、今度は「経営者」として現場からマネジメントに立ち位置が変わりそうなものですが、
ミヒャエル・トーネットという人物は心底「研究者」だったのでしょう、
彼はその後も次々に新しい椅子を開発していきます。
実際、会社の規模が100人を超えるころになると、早々と彼は経営を5人の息子たちに引き継ぎますが、
製造にかかわる仕事だけは、彼が最後まで現役で行っているほどでしたから。
ちなみに、この時1853年、トーネット社は「ミヒャエル・トーネット商会」から
「ゲブルダー・トーネット商会(英名トーネットブラザーズ=兄弟社)」と社名を改名しています。
さて、トーネットが飛躍する発端となったNo4ダウムですが、
まだまだ初期型は製作に手間のかかるマホガニー製の成型合板による曲げ木椅子でした。
しかしあくなきミヒャエル・トーネットの曲げ木研究は、ついに無垢の部材ですら曲げることを可能にします。
・・No4ダウムの背もたれを見てください。
”S”字に曲がった唐草文様の部品がシンメトリー(左右対称)に設置されていますよね。
1本の棒を曲げると当たり前ですが、外側は伸び、内側は縮みます。
仮にお湯で煮て柔らかくした木材を曲げることができたとしても、乾燥すると伸ばした外側が割れてしまいます。
そこで初期のNo4では内側と外側の材料を変えることで、つまり合板を使用することで、
その木材の繊維の収縮、乾燥後の形状変化に対応していたのです。
しかし、着実に研究を重ねていたミヒャエル・トーネットは、1856年、
ついに同じ繊維構造をもつ1本の無垢材ですら、乾燥後もはじける(割れる)ことなく
曲げることができるほどに技術を向上させました。
そしてさらには、その木材の2重の曲げ、すなわち、片側を伸ばしてかつ縮める”S”字の曲げを
ついに単一材、要するに1本の無垢材でも成し遂げたのです。
ここにトーネットの曲げ木の基礎技術は決定的に完成します。
デニムのサイトで何気なくご覧になっていただいている”No4ダウム”の背もたれの”S”字の飾り。
実は、それこそがトーネットが開発した高度な「曲げ木技術」のシンボルだったのです。
この年、トーネットの曲げ木特許権は新たに更新されています。
そして、いよいよバージョンアップしたトーネットの曲げ木技術は、ついにNo4ダウムを「世界初の量産家具」という、
当時のスーパー「ハイテク商品」へと生まれ変わらせることになるのでした・・。
※以下、「お客様担当からのコメント」欄へ続きます。
Condition/商品の状態(修理担当職人からのコメント)
こちらは新品未使用品になります。
製造はチェコの民間企業TON社にて行われております。
デニムがTON社より直輸入してご案内いたします。
チェコはポーランドとともにベントウッドの原材料となる、良質なヨーロピアンビーチ(ぶな)の産地です。
旧トーネット社でもウィーン工場の次に、主力工場を1856年、チェコのコリッチャヌイに建設しています。
さらに1860年、旧トーネット社は同じくチェコのビストリッツェに第三の工場を建設しています。
この旧トーネット社のチェコ・ビストリッツェ工場を、1953年、TON社が受け継ぎ、
旧トーネット社の伝統技術を今に伝えているのです。
ちなみに”TON”とは「曲げ木家具製造工場」のチェコ語の頭文字ということです。
さて、以下こちらのNo4ダウムについてご紹介します。
1850年の発売以来、150年以上経過した現在でも、その基本デザインを変えずに生産され続けている、
旧トーネットのオリジナルモデル、No4 “カフェ・ダウム”。
ただし、生産には高度な曲げ木技術が伴うため、量産のレベルがどんどん高度に求められていった20世紀以降、
大量生産に適するモデルはどんどんとその生産数を増やしていく一方、
N04ダウムはその生産数を減らし続けていました。
そして19世紀には「世界初の量産家具」と称されたNo4ダウムも、
もはや20世紀の近代化の流れには逆らえなくなったのです。
もともと旧トーネットのポーランド工場、ノヴォ・ラドムスク工場と、チェコのビストリッツェ工場(TON社)でのみ、
生産が続けられていたNo4ダウム、
それが数年前、ポーランドではついに廃盤となってしまいました。
トーネットファミリー以外の家具メーカーでは、一部まだNo4ダウムがつくられている地域もあるようですが、
旧トーネット直系の曲げ木家具メーカーでは、ついにこちらのTON社のみが、
唯一のNo4ダウムの生産メーカーとなってしまったのです。
大変残念なことです。
ただでさえNo4ダウムのアンティークはそもそも流通量が少なくてほとんど入手することができず、
近年の生産数も極端に少ないため、ポーランドの生産中止情報はデニムにとってかなりショックでした。
つまり新品、アンティーク問わず、今ではNo4ダウムを入手すること自体が困難な状況となってしまったのです。
海外オークションなどで見かけても、非常に高額な値がついていて、なかなか手が出せません。
ということで、残されたこちらのTON社製No4ダウム、新品とはいえ大変希少なモデルと思います。
はたしてTON社もユーロによる人件費高騰の昨今、いつまで生産を続けられることか・・。
さてそんな貴重なNo4ダウムですが、No14と同様、つくられた時代や生産された場所・会社によって、
その形に微妙な違いのあることがわかります。
ただし独立系(他国製など)の模倣品はここではお話に含めないこととします。
ただNo4ダウムに関しては、商品だけでなく、情報量もNo14などに比べて極端に少なく、
デニムが今までに見聞した推測の域を出ておりませんことを予めご了承ください。
今までアンティークのマーケットをみてきた限りでは、No4ダウムは旧トーネット以外にJJコーン社、
フィッシェル社のモデルも見ることができます。
とすれば、ムンドス社もつくっていた可能性がありますが、高度な製作技術を要するパーツもありますので、
中小の曲げ木家具メーカーでは製作は出来なかったでしょう、
メーカーはほぼこの4社と特定できると思います。
また、JJコーンは後に旧トーネットと合併しますので、直系モデルとみて良いかと思いますが、
コーン社製も含めるとNo4ダウムは大きく4タイプに大別できそうです。
下の写真は、旧トーネット直系のNo4ダウムです。
※旧トーネット直系のNo4ダウム(左はカタログ、右はアンティーク)
No4ダウムの分類1つめは、19世紀の旧トーネット・オリジナルデザイン(上のお写真左半分の肘掛椅子4脚と右2列目上の椅子)、
2つ目はJJコーン社の模倣デザイン(右2列目下)、
3つ目は旧ポーランド工場の戦後~現代までのデザイン(右上)、
4つ目は旧チェコ工場(またはドイツ?)と思われる20世紀後半のデザイン(右下)、
の4タイプです。
19世紀のNo4ダウムはストレッチャーがあったり脚のラインが違ったりと、微妙な違いはあるものの、
おおむねその違いの判断が難しいレベルです。
ということでひとまとめとしています。
JJコーン社はトーネットのデザインに近いように見えますが、おそらくサイズが違っているのと、
脚と座枠のジョイント部分のデザインが違っていると思われます。
それで別分類。
20世紀中盤以降はポーランド製とチェコ製に限られるようですが、
ポーランドもチェコも、背の「唐草文様」の形がどちらもオリジナルデザインから変化しています。
この唐草文様がNo4ダウムのアイデンティティでありながらも、その反面、
大量生産を阻害している要因だったのでしょう、文様がだんだん簡素化されてきているのがわかります。
No14同様、それでもポーランド製は旧型のイメージを残しているように見えますが、
チェコはあえてモダンな印象にデザインを進化させているように思われます。
このチェコ製は初期のTON社製かもしれませんが、別会社だったとしても同じ地域だとデザインが似ている傾向がありますので、
現在のTON社No4ダウムは、こちらのチェアをより一層、
現代風のスタイリッシュなフォルムにリファインしているように見受けられます。
こうして、唯一の旧トーネット直系モデルとなった、現TON社製No4ダウムは
クラシック、というよりもモダンな「唐草文様」となり、こちらは直系モデルの5タイプめ、ということになります。
このように、曲げ木の生産技術を確立した後、”ノックダウン”(組み立て式)を可能にした、
19世紀のハイテクチェア、No4ダウムも、
今や最も手のかかるハンドメイドの高級曲げ木家具に、時代が変えてしまったというわけです。
尚、上のお写真で、右4脚のアンティークNo4ダウムにはすべて、両サイドに座と背をつなぐサイドプレスが付いていますが、
これは現在でも「有り無し」を選択できるパーツです。
今まであまりサイドプレスの付いていないNo4ダウムを見たことがないのはちょっと不思議なことです。
(1904年のカタログにさえサイドプレスが付いています。)
こうしてみると、当時から高級ラインの扱いだったのかもしれませんね。
あと、旧トーネット社のフランケンベルグ工場でも、No4ダウムはつくられていたはずですが、
情報が全くないので、ご紹介することができませんでした。
ちなみに現在の”トーネットTHONET”ブランド(商標権)は、
この旧トーネット社のフランケンベルグ工場を引き継いだドイツの新トーネットが継承しています。
しかし、ミヒャエル・トーネットが興した純粋な”ゲブルダー・トーネット商会”(ここでは旧トーネット)は
第一次大戦後、いったん消滅していますので、現在THONETに由来する全ての会社は、
旧トーネット社の「末裔」たち(ここでは新トーネット、またはトーネットファミリーと呼びます)、
と考えていただいた方がよろしいかと思います。
このように、全世界を席巻した「トーネット帝国」が崩壊した影響は非常に大きく、
現在でも消費者に非常に分かりにくい複雑な状況をつくっています。
我も我もと多くの曲げ木メーカーが”トーネット”を語り、商標を正統に受け継いだドイツの新トーネットでさえ、
THONETブランドを告知できない国すらある状況なのです。
それらのお話については別の機会にお話しをさせていただきたいと思います。
乞うご期待!
さて、デニムの目利きで仕入れているわけですから、もちろん前述のようにアンティークのNo4ダウムを徹底的に研究した上で、
歴史あるNo4ダウムの仕様に最もふさわしい形でご案内させていただいております。
まず量産化が始まった当初、1859年のカタログポスターを確認してみます。
※1859年 ポスターカタログ(右下部がNo4ダウム)
この時代のチェア、何か・・1つ1つ心のある「生き物」のように見えてしまうのは筆者だけでしょうか?
この当時は開発者、ミヒャエル・トーネット自らが製作に携わっていた時代ですから、
本当に「生命」が宿っていても何の不思議もありませんけど、ね。
全てのチェアについて、脚の形状が当時の曲げ木技術では難しいと言われた”S”字カーブを描いています。
でもまだリングストレッチャー(脚をつないでいる円形の補強材)はどの椅子にも存在していませんでした。
旧トーネット社の最盛期、1904年のカタログ(下記エキストラフォトご参照)も、
掲載されているNo4ダウムはアンティークでしか見ることのできないオリジナルデザインです。
おそらく第一次大戦後、旧トーネットが消滅して解体され、第二次大戦後、地域ごとの生産に移行した際、
それぞれの地域でデザインの改定が行われ、先に載せた写真のポーランド製(右上)、チェコ製(右下)などのデザインに
マイナーチェンジされていったのではないかと思います。
1904年当時、標準の座面サイズはサイドチェアで幅42cm×奥行42cm、アームチェアは45cm×45cm、
全高はサイドチェア90cm、アームチェア92cmとあります。
座面形状は丸みを帯びた台形です。
先に載せた写真のポーランド製(右上)、チェコ製(右下)のNo4ダウムは、
全高と幅がほぼ1904年モデルと同寸でしたので、背の「唐草文様」や座枠の特殊形状のみ、
生産上の都合で改定されたのでは、と推測されます。
一方、現在のNo4ダウムは座面幅39.5cm×座面奥行40.5cmの1サイズで全高は87cm、
アームチェアは座面幅42.5cm×座面奥行45.5cmで同じく全高は87cm、
全体のサイズバランスは変わらずに少しスリム化されました。
座面形状も、同じ台形でも少し角ばった形状になりました。
また、脚のラインも初期の「先曲がり」から、現在は均等なカーブに変わりました。
全体として、モダンでシャープなデザインに進化しています。
※1904年 カタログ商品仕様ページ(中央列がストレッチャーの仕様)
上のカタログも1904年のもの。
当時、ストレッチャー(脚の補強材)がリング型、クロス型、アーチ型から選べるようになっていました。
現在もそのオーダーメイドの仕組みは変わっていません。
ただし、クロス型はなく、変形のアーチ型があります。
当時はリング型が主流で、アーチ型はアンティーククラスではほとんど見たことがありません。
現在は逆にアーチ型が主流のようでリング型は少数派です。
シャープな現代風フォルムはアーチ型の方がデザイン上合わせやすいのかもしれません。
でも、デニムではアンティーク仕様にこだわり、今回、リング型で製作していただきました。
オリジナルのアンティークトーネットのスタイルをしっかりイメージしていただけると思います。
そしてインタルシア(座面のエンボス柄)にも当然こだわりました。
今回はアンティークで良く見かける、アールヌーヴォー調の植物文様でオーダー。
※1904年 カタログ商品仕様ページ(下段中央が同じエンボス柄)
細かなデザインまでは確認できませんが、TON社のインタルシアも上の写真とほぼ同じ柄のように見えます。
旧トーネット社のビストリッツェ工場時代のエンボス型をそのまま継承しているのかもしれません。
尚、TON社では今でも当時のように複数のエンボス柄を用意しています。
最後に、カラーはアンティーク風なエボニー(黒檀色)系といたしました。
現代のウレタン塗装になりますが、その分、耐久性は高く、アンティークの最大の弱点、
水分でニスが白化してしまう欠点もありません。
一般のご家庭ではもちろん、レストランなどの業務用としても存分にご活用いただけます。
ただし、現代塗装とはいえ、木目を生かした半透明のダーク色ですので、
無垢の家具らしさは残されておりますし、本物のアンティークと並べても不自然さはありません。
以上、アンティークを知り尽くしたデニムだけに、徹底的に仕様にはこだわらせていただきました。
アンティークではなかなか手に入らない、
それどころか新品もすでに入手困難になっているベントウッドチェアNo4ダウムを、まっさらな新品の状態で。
ぜひ将来、本物のアンティークに育てていただければ幸いです。
※当ベントウッドチェアは昔ながらの製造工程で製作されるため手作業も多く、現代の生産設備に比べれば手作りに近い商品になります。
そのため商品価値に影響しない程度のわずかな小傷、色むら等がある場合もございますが不良品ではございませんので、
あらかじめご了承いただきたくお願い申し上げます。
Impression/当店の評価(お客様担当からのコメント)
※「仕入担当からのコメント」欄からの続きです。
・・歴史的な偉業の背景には、いつの時代でも、その時代が求めた「必然性」が存在します。
1本の無垢材で、”S”字カーブの曲げ木を実現したミヒャエル・トーネット。
彼の生きた時代には、産業革命によって急速に膨れ上がった巨大な「都市需要」がありました。
すなわち、大都会”ウィーン”にとって、高価で少量しか供給されない従来型の「木工工芸品」としての家具は、
もはや時代のニーズに合わなくなってきていたのです。
そこに唯一家具の量産を可能にする「曲げ木」技術が完成しました。
しかもそれはトーネットだけの独占的な特許権として、です。
・・もはやあとは多くの言葉を要しなくてもお分かりですよね。
そう、あたかもビッグバンのごとく、トーネットはその後、急速に膨張していくことになります。
もちろんトーネットの成功は時代の潮流だけではありません。
ミヒャエルトーネットのあくなき探求、そして5人の息子たちの経営努力の賜物であることは言うまでもないことでしょう。
バージョンアップした曲げ木技術の完成(再特許取得)はミヒャエル・トーネットが60歳の時。
彼が本当にこの世に功績を残すのは、さらにその後のことなのですから・・。
尊敬の念でいっぱい・・本当に頭が下がります。
さて、トーネットが歩んだ次のステップは、産業革命によって膨大に膨れ上がった、
「成長需要」への供給体制をつくることでした。
まずNo4が”ノックダウン”と呼ばれる「組み立て型」に改良されました。
少量の部品を組み合わせることで1つの椅子を構成する、
いわゆる「世界初の量産家具」No4ダウムの最終形が完成した瞬間です。
そして生産工程を徹底的に単純化し、特殊な熟練技術をもたなくとも、
No4ダウムの構成部品は製作が出来るように工夫されました。
つまり、工場の周りから多くの人を集めさえすれば、No4ダウムの大量生産が可能になったのです。
これは家具史の中でいわゆる「工場制手工業」、すなわち家具の大量生産時代が始まったことを意味しています。
それに先立ち、トーネットは当時の最先端技術、「蒸気機関」を工場に取り入れています。
時は1853年の後半。
「曲げ木」の蒸し器のための導入と思われますが、いち民間企業としては当時、かなり進んでいたのではないかと思います。
一方、ミヒャエル・トーネットと5人の息子たちは、事業家としてもその先見性や実行力の面で、
非凡な才能を発揮していきます。
まずは新しい工場地の取得。
1856年、トーネットは手狭になったウィーンから、コリッチャヌイに主力の工場を移設します。
コリッチャヌイは広大なビーチ材の森が横たわる肥沃な土地で、
近隣には低賃金で働かせることのできる労働者の住む町もありました。
この地を首尾よく買収し、ここに原料調達、労働力の確保の環境が整いました。
そしてミヒャエル・トーネット自ら量産のための工場設備を開発します。
現代風な表現でいえば、曲げ木家具製作のための丸のこや半自動の旋盤らしいのですが、
量産に不可欠な機械設備はミヒャエルとその息子たちが試行錯誤しながら自社開発していきます。
門外漢でも必要とあらば自らが行動する、この実行力。
ここでトーネットの”ビッグバン”は目前にまで迫りました。
さらには多くの無教養な人たちの教育。
野良仕事しかしたことのなかった人たちをどのように工場作業員として育てていったのか、
研修活動も想像を絶する重労働だったと思います。
ちなみに工場がきちんと稼働して完成品を産出できるまで、結局、数年の歳月を要したようです。
そのような多忙な日々の中ですが、ついに1859年、世界史に残るスーパーメガヒット商品、”No14”を開発します。
最初のNo14はコリッチャヌイ工場にて生産されました。
後に世界初の“コンシューマーチェア”(消費者のための椅子)と言われるほど、その売れ行きは例のない膨大な量で、
その後70年間で5000万脚、現在までNo14の模倣品も含めると実に2億脚!もの椅子が生産されたといわれています。
すぐにコリッチャヌイ工場では生産が追いつかなくなり、1860年にはビストリッツェに、5年後にはグロスウグロウ、
ハレンコフ、フセチンとトーネットは発展に発展を重ねていきます。
そしてトーネットはわずか20年後、1876年には5つの大工場(6番目のノヴォ・ラドムスクは1880年設立ですので除く)、
4,500人の労働者を雇用し、10台の蒸気機関を所有、1日/1,750ヶの椅子、250の家具を生産し、
ヨーロッパはもちろんロシアからアジア、北米、南米まで、販売は全世界に輸出をするまでに至っています。
確かに“No.14”は世界史上に残る優れた名作椅子ですが、地方の弱小家具メーカーだったトーネット商会が
これだけ短期間に世界企業へと変貌を遂げられたのは、
ミヒャエル・トーネットと5人の息子たちの経営者としての手腕を見過ごすわけには行きません。
例えば、政治力を使った原料調達の交渉力、部品輸送で現地組み立てという従来の商品物流を根底から変えた輸送方法、
展示会を活用したイベントプロモーションや商品カタログ/ポスターといった当時では最新の宣伝活動と、
あらゆる経営面で彼らは天才的な手腕を発揮するのです。
どれほどNo14が優秀な商品でも、彼らの才能がなければ、新たな歴史の扉は開かなかったでしょう。
優秀な商品、といえば、もうひとつ、No14が誕生した翌年1860年、注目すべき商品が発売されます。
No7000番台の第1号、”No7001”ロッキングチェアです。
複雑で高度な曲げ木技術で製作された、この揺れる肘掛椅子。
今までとても庶民の手には届かなかった高級家具が、世界で初めて庶民の手の届く価格で誕生したのです。
もともとロッキングチェアなど全く一般庶民の認知のなかった商品でしたので、
生産も販売も当初はごく少量だったようですが、ミヒャエル・トーネットの稀代まれなる先見性は、
このロッキングチェアが現代でも生き続けていることで、明らかに証明されています。
その後、彼らの狙い通り、パブロ・ピカソなど、著名な文化人が愛用するなど、着実に庶民にその認知は広がっていき、
No7001をルーツとするロッキングチェアは、常に人気商品としてラインアップされ、21世紀の今でも生産が続けられています。
驚くべきは150年前すでに、商品を「量販品」と「高級品」に分け、顧客を分類し、そして育成するという、
近代的なマーケティング・ストラテジーを実践していたトーネット一族、
その偉大な才能には本当に言葉がありません。
・・長々とよもやま話にお付き合いいただきありがとうございます!
最後に一言だけ。
-ミヒャエル・トーネットは自身のライフワークだった「曲げ木」の生産技術を、その人生の晩年になってようやく確立します。
「世界初の量産家具」 No4ダウム、そして「夢の“コンシューマーチェア”」 No14、
さらに「世界初の庶民のための高級家具」 ロッキングチェアNo7001と、
歴史に残るそれらの商品を開発したのは、彼の75年間の人生の中で、実に60歳を過ぎてからでした。
これほど晩年まで、夢を追い続けることのできた原動力は、一体どこにあったのでしょう。
1871年3月3日、偉大な発明家であり企業家だった、ミヒャエルトーネットはその生涯に幕を閉じました。
彼が興した”ゲブルダー・トーネット”商会は、今や日の昇る勢いで発展している段階にあり、
5人の息子たちに自身の経営のバトンが完全に手渡されたのを見届けた後でしたから、
安心しきっての大往生だったことでしょう。
彼の人生には一片の悔いもなかったのでは、と思います。
現在、彼はウィーンの中央墓地に眠っているそうです。
かのベートーベンをはじめとする稀有な音楽家たちの墓が並ぶ一角に、
愛すべき一族とともにおさめられているそうです・・。
※各項目の文字をクリックするとその項目の説明ページにジャンプします。
商品基本情報 | ||||
品名 | トンTON ベントウッドアームチェア No4 カフェダウムCafe DAUM/321 | |||
品番 |
AC0298
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管理番号 | TON13-1_0112 | |
販売価格(税込) | 39,900 円 | 在庫数 | 0 | |
サイズ |
幅 500mm 奥行 595mm 高さ 870mm 座面高 445mm 肘掛高 660mm 座面奥行 430mm 座枠高 465mm ※ハンドメイドに近い無垢の木工家具ですので、サイズには多少製造誤差のある場合がございます。 ※アームチェアの送料は1脚単位です。 | |||
送料ランク・重量 |
佐川急便260 送料目安:6,420円~11,720円
佐川急便による配送になります。 ※ 同梱可能な複数商品の送料はご注文後に別途お見積りをご提示いたします。 | |||
商品分類 | クラス | |||
デザイン | ||||
ユース | ||||
ランク | ||||
カテゴリ |
椅子/Chair
> アームチェア
無銘の椅子コレクション/Premium Chair Collection > 現代のベントウッドコレクション > トン/TON |
商品プロフィール | ||||
原産国 | チェコ | 年代 | 2010年代 | |
メーカー | デザイナー | |||
主要素材 | ||||
主要素材の材質 | ||||
主要素材の等級 | ||||
商品の無垢率 | ||||
カラー | ||||
塗装・仕上げ | ||||
その他素材 | ||||
その他の素材のカラー | ||||
メンテナンス状況 | ||||
コンディション | 傷の程度 | |||
目立つ傷 | ||||
交換・改造 | ||||
実用性 |
商品プロフィール | ||||
原産国 | チェコ | 年代 | 2010年代 | |
メーカー | デザイナー | |||
主要素材 | オーク | |||
主要素材の材質 | ||||
主要素材の等級 | ||||
商品の無垢率 | ||||
カラー | ||||
塗装・仕上げ | ||||
その他素材 | ||||
その他の素材のカラー | ||||
メンテナンス状況 | ||||
コンディション | 傷の程度 | |||
目立つ傷 | ||||
交換・改造 | ||||
実用性 |
商品評価 | ||
デニムの総合評価 |
商品評価 | ||
デニムの総合評価 |
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