CH0234
イギリス
1760年代 アルティメットクオリティ ジョージアン スーパーマホガニーチェストオンチェスト
サイズ |
幅 1050mm 奥行 585mm 高さ 1865mm ※ 詳しいサイズは、こちら |
アンティーク家具・照明の専門店「デニム アンティーク ファニチャー」へようこそ!当店ではチェアやテーブル、キャビネットなどのイギリス(英国)アンティーク家具やランプ、シャンデリアなどのフランスアンティーク照明を低価格と安心品質で全国へお届けしております。
Outline/商品の概要(仕入担当者からのコメント)
英国家具史上「最高品質」と謳われる、“ジョージ・スリーGeorge Ⅲ”の家具。
200年以上を経ても一切その実用性を損なわず、アンティークマーケットでも、常に「最高級」の評価を受け続ける、
18世紀後半の”レイト・マホガニー・ピリオド”、「後期マホガニーの時代」のマホガニー家具、
チェスト・オン・チェスト、あるいは通称”トールボーイTall Boy”。
ついに至高のアンティークがデニムに・・。(涙)
そう、まさにかつては「高嶺の花」でした。
リーズナブルな“ユーティリティ・アンティーク”(実用目的の骨董)をご提供したいと考えていたデニムでは、
ジョージアン・スリーのチェストオンチェストと言えば、“コレクティング・ファニチャー”(収集目的の家具)の代表格。
とても手の出せる範囲の骨董家具ではありませんでした。
それが今や、良いのか、悪いのか・・。
元来、ジョージアンの高級アンティークを好み、最も買い求めていたのはアメリカでした。
また通常、英国アンティークの主要な輸出先とされていたのはドイツで、
それらの主要輸出国のマーケットニーズがアンティーク家具の相場に大きな影響を与えていました。
それが2009年以来、いずれも世界的な個人消費の減速で、特に高価なコレクティングファニチャーの需要が低迷。
ジョージアンの高級アンティーク相場も例外ではなく、ここ数年でかなり下落いたしました。
またイギリスのポンド安が進んでいることもあって、日本から見ればさらに数年前では考えられない相場に。
それでも高価は高価で、まだまだ手を出せないクラスのアンティークがほとんどですが、
何とかちょっと背伸びすれば入手できる価格のアンティークも、
よくよく探してみれば見つけることができるくらいにまで時代は変わってきたのです。
おそらくこの先、2度と製作することのかなわない家具ですから、今はジョージアンの家具の買い時かも・・。
ということで、デニムもひそかに狙っていたチェストオンチェストをゲットすることに成功しました! (喜)
筆者は、このような絶滅危惧種の「希少銘木」を使用した無垢の家具は、
いずれ「宝石」同様に扱われる時代が来ると予想しております、例えば、公認機関への登録制になるなど。
・・が、はたして?
さて、そんな「家具の宝石」とも言えるジョージアン、それも“ジョージスリー”の時代の家具。
事あるごとにコメントで触れてきましたが、おさらいの意味でそのアウトラインからご紹介したいと思います。
ジョージアンとは、最も隆盛を極めたジョージ3世(GeorgeⅢ 1760-1820)の時代を中心に、
“アーリー・ジョージアン”(GeorgeⅠ 1714-1727)、“レイト・ジョージアン”(GeorgeⅣ 1820-1830)も含め
18世紀前半から19世紀前半までの時代を総称しています。
そして、この時代に作られた家具は“ジョージアン”の家具と呼ばれ、
英国アンティーク家具の中でも最も質の高い良品が産出された時代と言われています。
これが「イギリス家具の黄金期」と呼ばれる所以です。
といっても、どこがすごいのか?
よくわかりませんね。
おおざっぱに言うと、
①「素材」がすごい
②「造り」がすごい
③「デザイン」がすごい
という3点ですごいのです。
でも、家具という製造物で、素材、造り、デザイン、というのは全部の要素では?
と思われますよね。
そう、結局、全部すごいのです(笑)
つまり、現代感覚の「家具」とは全く次元の違うものと思っていただいた方が良いと思います。
例えば①「素材」。
ジョージアンの時代は、一方では「マホガニーの時代」とも呼ばれていました。
そのマホガニー材は、今ではすでにワシントン条約のレッドリスト化により伐採が禁止となり、
すでに輸出入すらできない材料となっているため、
ほんのちょっとした残存の板材でも数万円の値が付いていたりします。
特に現代の最高級マホガニーの代名詞、“ホンジュラス”産マホガニーには、もれなく高値が付いています。
でも・・ご存知ですか?
かつて、高級マホガニーといえば、その代名詞は”ホンジュラス”ではなかったのですよ。
18世紀当時、イギリス政府は植民地である北米や西インド諸島の材木の輸入関税を廃止したことで、
今でいうところのジャマイカ、プエルトリコ、キューバなどから、多くの家具用木材がもたらされていました。
それらの家具用木材の中には、同じマホガニーでも多様な種類のマホガニーが存在していて、
さまざまな木質があったため、その材質によって銘柄が選別され、適材適所で用いられていました。
例えば、木目が詰み、赤みが強く、金属のように硬い、“ジャマイカウッド”、あるいは
キューバン・マホガニーをはじめとする、最も美しい木理とされる “スパニッシュマホガニー”等は高級家具材に使用。
そして、比較的軽くやわらかい、加工が容易な“ホンジュラス”マホガニーなどは
見えない部分の構造材や汎用家具に使われていた、ということです。
つまり、現代の最高峰銘木も、当時ではただの一般材。
ね、次元が違うでしょ。
ちなみに、同じように見えるチッペンデールのマホガニー無垢のダイニングテーブルでも、
ものによって値段が大きく異なっていることに気が付きませんか?
これは、当時の“スパニッシュマホガニー”などの高級マホガニー材が使われているか否か、
によって価格が変動するため、なのです。
もちろん、価格はそれだけでは決まりませんし、アンティークの製造物がどこ産の材料を使用しているかなど、
確たる証拠のあるはずはありません。
しかし、ジャマイカやスパニッシュは比較的巨木の幹だったため、幅広の厚板を取ることができるという特徴があり、
また磨くと美しい深みのある色を見せ、歳月を重ねれば重ねるほど赤銅色の艶が増すという、
特異な性質をもっているため、ある程度はその種別を推測することができます。
つまり、当時の高級材が使用されている可能性の高いテーブルには
その価値が加味されて、価格に反映している、ということになります。
つぎにその②「造り」のすごさ。
技術的なことを語れば、賛否はきっとあるでしょうし、
例えばエジプトのピラミッドとドバイの高層ビルを比較して、
どちらが建造物として優れているかなど、議論しても全く意味はありませんよね。
もっとうわべだけの話。
当時のイギリスは産業革命まっただ中でした。
急速な経済発展の中、人々の生活も潤い始めて活気のあった時代に
国が支援する事業として家具産業がありました。
つまり「家具の製造」は当時の経済大国が支援した先端産業だったわけです。
有識者が諸外国を回り、多くの技術やデザインをイギリスにもちこみました。
今でいえばIT産業のようなものでしょうか?
そんな時代ですから、一介の家具職人が上流階級にまで上り詰める成功例もまれな話ではなかったようです。
まさに現代のIT長者ストーリーに重なりませんか。
そんな先端産業としての「好循環」が、当時の家具の質を「黄金期」と称するまで高めたのです。
ある文献では、イギリス・ジョージアンの民衆家具は、同時代のフランスの宮廷家具のレベルに匹敵する、
とまで書かれていました。(ホント?)
いかにジョージアンの家具といえども、所詮、民間の富裕層のために作られた家具。
それが王侯貴族のための家具と肩を並べるなんて・・。
まあ、そのくらいすごいってこと。
要するに、製作にかける労力のスケールがケタ違いだった、ってことです。
細かくいえば、もしかすると設計や製作精度では、ジョージアンの家具から100年後、
東洋の島国で作られ始めた「桐箪笥(きりだんす)」の方がはるかに進んでいるのかもしれません。
でも、細かい話は抜き。
300年以上、その姿を維持し続ける家具、です。
その「造り」の確かさ、すごくないわけがありません。
そして、その③、「デザイン」。
デザインのすごさはインパクトではありません。
印象度の強さなら、歴史上いくらでもありますからね。
逆に“ファーマー・ジョージ”などと揶揄されるように、この時代のデザインは結構質素です。
しかし、名のある家具デザイナーが初めて世に出現したのがこの時代でした。
王室に近いウィリアム・ケントを筆頭に、アダム兄弟、チッペンデール、ヘップルホワイト、トーマス・シェラトンなど、
貴族趣味の建築様式ではなく、初めて個人のデザインスタイルが確立された時代でした。
つまり言い換えると、初めて民衆のニーズが家具に取り入れられた時代、といっても良いかもしれません。
実際、この時代に作られた家具が、ほとんどの現代家具のルーツとなっています。
現代の家具のマザーモデルが作られた時代、といっても言い過ぎではないでしょう。
今なお、生き続けている時代を超えたデザイン性。
これ以上すごいことってありますか?
・・なんて、長文、大変申し訳ございません!
興奮して前置きが長くなりすぎてしまいました。
その割に、このチェストについては何も語っていませんね。
こちらのチェストオンチェストは“トールボーイ”(高脚つき箪笥)とも呼ばれる、
英国伝統・ジョージアン生粋のデザインの最高級マホガニーチェストです。
背の高い“チェストonチェスト”の2段組み構造は、18世紀初め、
アーリージョージアンの時代に生まれた家具といわれています。
その初期のころは、当時主流だったクイーンアンスタイルのデスク(化粧台)に
チェストをのせた“チェストonスタンド”として、上流階級の間で普及していましたが、
18世紀も後半になると、このような「2段重ね」のハイチェストスタイルが主流になって行ったそうです。
ちなみに“チェストonスタンド”のトールボーイは、前面にウォルナットのバール杢が化粧張りされ、
「ウォルナットの時代」と呼ばれたクイーンアンらしい外観がスタンダードでしたが、
“チェストonチェスト”になると、今度は「マホガニーの時代」のジョージアン家具らしく、
マホガニー製家具として、つくられていることが当時の流行でした。
まさにこのチェストそのもの・・リアルタイムです。
細部をチェックしても、まさに当時のスタンダードデザイン。
たとえば、トップデザインには“デンタルコーニス”という歯型の飾り彫りの入る天飾り装飾を置き、
その下の飾り面、および前面の両角には面取りをして“マーケットリー・インレイ”、”パーケットリー・インレイ”という
各種の象嵌装飾を盛り込んでいたりしています。
さらに下段にはバンディングという帯状の化粧張りによるアクセント。
もちろんそれらはすべて当時主流だったジョージアンスタイルのデコレーションです。
また、引出しは下台3段、上台4段5杯の全て鍵つき収納になっていて、
取っ手は座金付きの真鍮無垢製、当時ものオリジナルのスワンネック型ループハンドル、
そして引出し前板の周囲にはジョージアン独特の細いラウンド型のモールディングが飾られ、
脚元はプレーンブラケットというもっとも当時スタンダードだったフットデザイン・・、
これら全てはジョージアンスタイル生粋の“チェストonチェスト”である証し。
ね、パーフェクトでしょ?
さらにおまけ情報ですが、入手したディーラー情報では、”18世紀末ごろのジョージ・スリー”として入荷してまいりましたが、
デニムで時代考証すればするほど、18世紀前半の特徴としか思えないディテールがいくつも発見されています。
どう見てもこのチェストオンチェスト、デニムの推定では1730年ごろに作られたものではないかと思われます。
すなわち、今から300年ほど前の家具、ということ。
さらにさらに、その家具を、デニムが2か月以上の歳月をかけて、300年の時の針を巻き戻させていただきました。
おそらく、往年の姿が再現されtれいるのではないかと思います。
すごすぎでしょ?
おそらくこれほどの英国アンティーク、本国以外では数えられる程くらいしか存在していないと思います。
ここまでのものであれば、現地ディーラーの話では、
本国でも、数年前だったら£10,000!くらいの値が付いていたのではないか、ということ。
ちなみに現在、£1(ポンド)=\\\\\\\\140(円)前後ですが、数年前は\\\\\\\\250くらいでした。
何と、良い時代になったことか・・。
とにかく、骨董家具としては、この上もない最高級の逸品と思います。
きっと一生そばにおいておきたくなるくらい、愛でていただけるはず。
デニムがお勧めできない理由はどこにもありません・・。
(Buyer/YM)
Condition/商品の状態(修理担当職人からのコメント)
素材、デザイン、装飾技術、製作技術、いずれも見どころ満載のジョージスリーのアンティークです。
18世紀当時、富裕層のために、ハンドメイドで手間をかけて作られた当時の最高級家具になります。
そして250年前のアンティーク家具として、パーフェクトコンディションとご案内させていただきます。
でも・・アメリカ合衆国の独立宣言が出されたのが1776年ですけど、
このトールチェストはそれよりもさらに前に作られたものですので・・。
あくまで3世紀近く前の家具としてコンディションをご理解ください。
ここに至るまでには修復の長い道のりもありましたし。
というか、単なる「修復」という作業を超えて、デニムの職人スタッフが総出で取り組んだ1つのプロジェクトになりました。
昨年末より取り組み始めたプロジェクトですので、3ヶ月以上の歳月を費やしたことになります。
その結果・・当のデニムですら驚くほど、ピッカピカ。
一体だれがこの家具を、300年近く前のものと信じる人がいるでしょう。
250年前? それとも300年前?
いつはイギリスのディーラー情報では18世紀後半、1760~90年ごろものということでした。
およそ、230~250年ほど前のものということになります。
しかし、デニムが時代考証すればするほど、どう見ても1730年ごろのものではないか、という
特徴的な仕様がいくつか見られたのです。
もっとも分かりやすいのが、引き出しの前板形状。
1730年代を境に、引き出しの前板は収納されるスペースと同じサイズで作られるようになりました。
それは日本の古い家具にもみられる、”コックビート(玉縁)”という細い半円形のモールディングが
引き出し前板の周囲につけられるのが流行したからです。
※例えば、こちらのような引き出しです。
こちらの引出しのように、前板が引き出しの入るスペースよりも大きく作られていたのは1730年以前。
※下記エキストラフォトご参照。
この事実だけでも、18世紀前半の家具である可能性が高いと思われます。
ただ、当時は情報の伝播が遅く、地方の家具工房では流行おくれのデザインが珍しくない時代。
果たして、真実はいかに?
あと、よく指摘されるのはフットスタイル(脚のデザイン)。
こちらはプレーンブラケットフットというデザインですが、それもやはり流行したのは1720年ごろからの数十年間。
また一部の接合部には釘打ちがされていましたが、この釘が「角釘」という「和釘」に近い古いもの。
そもそも家具にオリジナルで釘を使うこと自体、相当古いものであることを物語っています。
そうしたチェックポイントから見て、デニムではこちらのチェストオンチェストは、”アーリージョージアン”、
1730年前後、およそ290年ほど前に作られたものではないかと推測しています。
約3世紀ほど前ということになります。
ただ唯一、取っ手金具、つまりループハンドルだけが18世紀後半のデザインなんですよね。
おそらく、このハンドルをオリジナルデザインと見て、ディーラーでは年代を推測したんだと思います。
確かに文献では、こちらの「円花座金」というフレンチスタイルの装飾を持つスワンネックハンドルは
18世紀後半に流行したとあります。
まあ、ハンドルは交換されやすいパーツなので、一番流動的な情報源ですが、
確かにハンドル自体はジョージアンオリジナルのものと思われるので、公式的にはディーラー情報通り、
18世紀後半のものとさせていただきました。
ちょっと長い前置きでしたがご参考まで。
さて、素材は、全面、西インド諸島産と思われるマホガニー化粧材。
ベース材は、オールドパインと呼ばれるイングランド原産のイングランドパイン。
もちろん総無垢で構成されています。
マホガニー無垢じゃないの? なんていわないでください。
昔だって、植民地より輸入されるマホガニー材は貴重だったんです。
それもスパニッシュマホガニークラスの大判の材料ともなればそうそう簡単には入手できない。
でも、19世紀ビクトリアンの時代は現代の倍くらいの厚みの化粧材だったと言われていますが、
18世紀ジョージアンは、そのヴィクトリアンの時代の倍の厚み、といわれています。
つまり、現代でいうところの「薄板」といったイメージ。
言い換えれば、主材はキューバンマホガニーとイングランドパインの総無垢ハイブリッド仕様、
といっても間違いではないかもしれません。
それにしても、さすが、歴史上もっとも品質の高かった「マホガニーの時代」のマホガニー材。
色は、華やかで深みのあるレッドマホガニー。
木目もとてもきれいに出ています。
総無垢なのに3世紀にもわたってほとんど変形していないところがすごい。
構造材として適材適所で使われているオールドパイン無垢材も収縮こそありますが、基本的に現役の状態。
いずれの材もとても良い筋目の材料で、引き出しの底板までも反りの少ない良質な無垢材が使われています。
見えない部分の構造材にも全く手抜きはありません。
しかし良材が総無垢で使われている反面、背の高いの家具ですのでその存在感も別格に大きいですが、重量も横綱級の重さ。
男性でも一人では動かすのは困難かもしれません。
この点はご留意ください。
さて、まずはこれほどのアンティークですので、なるべく商品のオリジナリティを維持しながら、
往年の姿と実用性を再生させることを目標に、修復作業にかかりました。
入荷時、あまり目を合わせないようにしていましたが、良く見てみると・・。
かなり埃まみれでしたので荒れているように思われましたが、
やはり見た目通り、ベーシックな構造部から細かい外観部分まで各所にダメージのあることがことがわかりました。
300年近く実際に使われてきているわけですから、そりゃ、ただで済むわけはありませんよね。
まず塗装面。
おそらく大切にされていたのでしょう、木肌の状態は悪くはありませんでした。
ただ退色が進み、マホガニーらしい赤みがなく、黄色っぽい色に変色してしまっていました。
また日焼けのためか、部分部分でも色合いが変わってしまっているので、
全体的に色合わせの調色をしながらを赤みを再生させる必要がありました。
もちろん、本来真鍮無垢のゴールドだったと思われる真鍮取っ手もまっ黒。
製作当時のイメージとは大きく変わっていることでしょう。
そして構造面。
数十年もすれば、良質な家具でも精度が狂ってくるといわれる総無垢の家具で、
300年もの歳月が経過しているのです。
普通だったらとても実用は無理なところですが・・。
確かに、木割れ、ほぞ抜け、角の欠け、木の収縮による接着面の剝れ、隙間など、
年代なりに各部修復の必要な状態でした。
しかし・・さすが世界史上もっとも良質な家具と称されるジョージアンの家具。
驚くべきことに、全て、再生が可能な作りとなっているのです。
確かにそうした構造にするには手間暇はかかりますが、だからこそ、こうして何世紀にもわたって
英国の優良な家具は生き続けているのでしょう。
といっても、現代の量産家具を否定するものではありませんけど。
また、奇跡的というべきか、特に基本的なフレーム構造にダメージのないことは幸いでした。
そして気になる金物などの付属品類。
これが最も幸運な点でした。
金物には取っ手、鍵が使われていましたが、まずロックは全て使用可能な状態で、
さらにオリジナルキーまで付属していました。
ジョージアンの鍵が、ですよ。
これこそ本当の奇跡。
しかも、かしゃんかしゃん、と小気味よく動いている・・信じられませんね。
19世紀ヴィクトリアンのキーですらほとんど壊れているのに、18世紀ものがこの状態・・。
全て鍵は使用可能です。
キーもオリジナルと思われる独特のくし型の柄をもつ当時もののジョージアンキーです。
ただ、交換された形跡のないことはわかるのですが、ロックシリンダーや取っ手も含めて、
何度もつけ直された形跡がありました。
どう見ても同時代の金具なので、オリジナルと思われるのですが、もしかすると後年交換されているのでしょうか?
取っ手金具もロックシリンダーも、微妙に位置が狂っていて、正しい位置につけ直す必要がありました。
(すべてではありませんが。)
いずれにしても金物自体の状態は信じられないほど良好。
さすが「家具の黄金期」ジョージアンの金物はそれほど出来が良かったということなのでしょう。
とはいえ、特に取っ手などは、これ元は何色? というくらい、まっ黒な状態。
中には、このように時代がかった古びた真鍮が好き、とおっしゃる方もいらっしゃるのですが、
デニムの修復コンセプトは、とにかく往年の姿を取り戻すこと。
どうしても当時の真鍮ゴールドを再生させたくて、全ての金具を外し、一つ一つ手作業で徹底的に磨き込みました。
結果として、デニムの職人スタッフが、ほぼ丸1日の時間を費やすこととなりましたが、
でもその甲斐あって、レッドマホガニーの美しい躯体に、ピカピカの真鍮ゴールドが輝く、
素晴らしいジョージアン・トールボーイが蘇りました。うっとり・・。
さて、話は戻りますが、修復の作業はまず実用性の回復から取り掛かりました。
主に背板や躯体の構造に使われている無垢材に木割れや収縮が出来ていたので、
その点をしっかりと接合させ、躯体の剛性感を向上させます。
また、引き出しの底板にも無垢が使われているため、ほぼ全段、すきまや割れが入っていました。
これもすべて埋め木や接着で対応します。
無垢の木割れはある程度現代の強力な業務用接着剤ならば再生することが可能です。
その他、ほぞ抜けや接着面の剝れについては、一般的なアンティークの締め直し作業で再生可能でした。
最も大変だったのは、引き出しの滑り調整。
かなり容量のある引き出しなので、目いっぱい詰めた状態で頻繁に出し入れすれば、桟がすり減って、
引き出しの動きが悪くなってきます。
それが300年も経過しているんです。
何度も修理跡がありましたが、いつの時代からかは全く修理されていなかった様子。
一番下の引き出しなどはほとんど動かせない状態になっていました。
デニムでは摩耗した桟に当て木をしたり、重みで落ち込んでしまった桟には隅木などの補強を入れたりと、
全ての段の引き出しを、数週間にわたって根気よく修理していきました。
その点も何とかすべて再生することができました。
現状実用コンディションとなっています。
あと、脚先あたりはかなり入荷時よりしっかりとしていて、全く問題のない状態。
ガタつきなどもチェックしています。
グラつきもありません。
これで構造補修が終わったところで、次は外観補修。
外装に使われているマホガニーの化粧材については、目立った反りやゆがみはなく、
したがって化粧張りの浮きなどはほぼ皆無な状態でした。さすがジョージアンの家具。
若干、収縮で木割れのある部分が側板に2か所ほどありましたが、そちらは埋め木で対応。
塗装すればほぼ気にならない状態になりそうでした。
今回、外観補修で一番問題だったのは、デニムの時代考証の重要ポイントとなった引き出しの前板。
当時の引き出しは、引き出し前板が収納スペースよりも大きく、ストッパーが要らない構造となっているのですが、
この収納スペースよりも1/4インチ(約5mm)ほど大きくなっているストッパーの飾り面が、
かなりの箇所、欠損していたのです。
もちろん修理自体は、埋め木対応で再生できるのですが、これを1つや2つではなく、十数か所やるとなると
ただ事ではありません。
さすがにデニムスタッフも心が折れて、この作業に1か月ほどの期間を費やすこととなってしまいました・・。
しかし、それも結局は完了!
これで木部のベーシックな部分ほぼ全て、往年の姿に完全再生できました。
あとは300年の汚れを落とし、塗装をすれば完成。
ということで、勢いづいてクリーニングにかかりました。
ところが、そう甘くはなかったんですね・・。
300年の汚れ落としがどれほど大変なことか、すっかりと忘れていました。
まずはデニム愛用のウッドソープ、「CR0291 HOWARD クリーナフィニッシュClean-A-Finish 473ml」による雑巾がけ。
表面的な汚れは落ちているのかもしれませんが、ほとんど変わっていない状態。
ほんとに掃除したの?って感じでした。
次は特殊な木部専用の「漂白剤」で化学洗浄。
う~ん、確かに白木の状態にまできれいに汚れが消え去ってくれたものの、たった一面の汚れ落としに半日かかる始末。
またデニムの職人スタッフは心が折れてしまいました・・。
この後、立ち直るのに半月を待たなければなりませんでした。
半月後、気を取り直して再度クリーニング開始。
もはや手段はサンダー掛けしか残されてはいませんでした。
もともと塗装面の塗装だけを剥離しようと思っていたのですが、結果、頭の先から足の裏まで、
また内部から塗装面まで、あたかも頭に血が上ったイノシシのように、猪突猛進、
一心不乱にサンダー掛けを行いました。
あとで冷静に考えれば、化粧材をムキになってサンディングしたら、
場合によっては化粧材をそぎ落としてしまうこともあります。
しかしそこは18世紀の家具。
化粧材といっても薄板ほどの厚みがあるので、ほとんど無垢の家具同様に扱うことができます。
もちろん何のダメージもなく汚れを削り落とすことができました。
一方では、引き出しの内部など、端っこのこびりついた汚れなどは手作業のサンドペーパーでも削り落しています。
結果として冷静に、かつ丁寧に仕事はしています。
全体的に、おおむねきれいな印象をもっていただける状態と思います。
このサンディング作業、終わってみれば、実に7日間、あしかけ3週間ほどの重労働となりました。
でもそれだけに、これほどきれいな300年前の家具は、他ではまずご覧になれない!、とデニムでは断言いたします。
無垢のキューバンクラスのマホガニーの美しさときたら・・。
しかも、引き出しの前板の杢目がすべてつながっているんですね。
巨木の西インド諸島産のマホガニーでしかできない芸当です。
そんな昔の家具職人のこだわりも発見できて、本当に全ての苦労が報われた感じがしました。
紆余曲折を経ながらも、いよいよ、レストアも終わりに近づいてきました。
ほぼ最後の工程となる塗装工程です。
どこまで商品として魅力的に見せられるか、塗装の完全再生を目指します。
ここで、ちょっと話は横道にそれますが、以前、日本のアンティークに精通されている方から、
「16世紀とか17世紀の古い家具というのは塗装などしていない。
色がついて見えるのは汚れがついているだけだ。」と聞いたことがありました。
その時は、何を言っているんだろう?、と意味が全く分かりませんでした。
確かに古い家具は汚れてはいるけれども、それとは別に色もついているじゃないか、塗装してあるじゃないか、と。
・・でも、このチェストの塗装作業で初めて、その時のお話の意味が理解できたのです。
それは、きれいになったマホガニーの木肌に着色用のレッドマホガニーステインを入れてみた時のこと。
何と赤みが華やかだったきれいな木肌が真っ黒になってしまったのです。
え?ええ?
ショックを受けて、もう一度、色をはがし取り、なぜだろうと考えてみました。
シーラーのような色留め塗料を塗ってしまえば、黒くはならないと思うが、生地本来の色合いが出てこない。
そこで、思い出したのが古い家具は塗装をしていない、という話。
古来から松脂を使った”ワニス”という仕上げ塗料が使われていたことは知っていたのですが、
もしかすると、古い木材というのは本当に何も着色されていなかったのでは・・?
そこで、半透明の液体、シェラックニスのみを塗装面に塗ってみることにいたしました。
すると、何とびっくり!
ニスを塗ったとたん、木肌の色がレッドマホガニーカラーに一瞬にして変化したのです!!
←半透明のニスを塗ったら、何と、木肌が真っ赤に変化!
・・ああ、あの方がおっしゃったことはこういうことだったんだ。
そこでようやく、昔された話が理解できたんです。
例えば”レッドマホガニー”という塗料の色は、マホガニー材に使う塗料の色だと常識的に考えていたんですが、
そうではなく、本来のマホガニーの色とは、クリアなニスを塗るだけでレッドマホガニーになる、しかし
そうならない、発色の悪いマホガニーがあるから、そういう材料のために
本来のレッドマホガニーカラーのように染められる色が作られるようになったのだ、と。
・・自分にとっては、今までの常識がひっくり返った感じでした。
なるほど、本当の銘木とは塗料はいらないんだ・・。
まあ、そうはいっても3世紀前の家具ともなると、もはや隠し切れない変色や汚れがあって、
色を整える必要があります。
ただ普段と違い、まず天然樹脂製のシェラックニスで各部を色留めして、本来の色が消えてしまわないようにしておいてから、
色合わせ程度に染色することといたしました。
それでも仕上がりは・・お写真のとおりダークレッドマホガニーに。
これでも、実はほとんどステインは入れていないんですよ。
ニスの重ね塗りで色が深くなっているだけです。
いずれにしても、全面きれいなダークレッドマホガニーに引き締まり、
往年の容姿が再生できたのでは、と思います。
最後にきれいに磨き上げた金具類を全てを元通りに組み直し、最終チェックをいたします。
あとはロックの調整を残すのみ!
ただ、残念ながら、今回はここで時間切れ。
撮影に回すこととなってしまいました。
鍵の調整はお届け前になりますので、申し訳ございませんが、お届け前に少しお時間をいただくことをご了承ください。
それとお届け前には、塗装の完全乾燥を見極めたうえで、天然蜜蝋のワックスで磨きあげてお送りいたします。
以上、これほどのアンティークですので、デニムスタッフ総がかりで、長期間、
手抜きなく隅々まで手を掛けさせていただきました。
ちなみに、上台と下台の連結については、下台の上部にある収納スペースに上台をはめ込み、
のせるだけの構成となっています。
地震の多い日本でも、このままの状態でご利用可能と思います。
上下の接合強化で、ビスなどを追加し固定する必要は現状感じられません。
大切に長くご利用になってください。
尚、以下はこのようなジョージアン家具の一大再生プロジェクトを終えてみての雑感・・。
現在、日本ではかなりの数、イギリスからアンティーク家具が輸入され、
アンティーク家具屋さんも全国各地、数多く存在していることと思います。
でも、おそらくデニムと同じレベルまで、修復作業を出来るところは、ごく少数のお店しかないのでは、と思っております。
なぜならば、大きな家具屋さんでは、多くの仕事をこなす中で、
これほどのレストア作業をこなすことは事実上難しいと思われるからです。
つまり、効率を追求するならば、このジョージアンのような家具は
非効率で儲からないことが分かっているので、手を掛けられないのです。
実際デニムでも、これほどの高価な値がつけられてはおりますが、作業時間を考えると、ほとんど赤字商品かと・・。
また小さすぎるアンティーク屋さんだと、他の仕事が全く手をつけられなくなってしまうので、
大手同様、絶対にこのような手間のかかる家具の修復には手を出さないでしょう。
また知識や設備的にも取り組むのは難しいかもしれません。
何人かの職人がいて、それなりの技術力があり、小さすぎず、大きすぎない修理工房。
このような修理工房でなければ、このような恐るべきジョージアンのチェストオンチェストなどには取り組めないでしょう。
コメントを読んでいただければわかるように、デニムでもこのようなジョージアン家具は、
レストアのための研究材料、ノウハウの蓄積のための、一種の試験素材と割り切らざるを得ない面があります。
余談でしたが、大きなところから小さななところまで、かなり手を尽くしたつもりです。
3世紀近く前の家具とはいえ、これからも実用家具としてお使いいただけると思います。
担当修理職人から自信を持ってお奨めさせていただきます。
(Restorer/YM)
Impression/当店の評価(お客様担当からのコメント)
素晴らしいアンティークが入荷しました!
アンティークファンなら知らない人はいない、あの、ジョージアンのハイチェストです!
しかも、キューバンマホガニーと思われる、銘木級のマホガニーとイングランドパイン製で、
現代家具にはない色つやとしっかりとした作りを感じさせます。
今では見かけることのない、バランスのとれたボディラインが印象的なトールチェストですが、
最高級家具でありながら、お気軽にお使いいただける実用アンティークでもあります。
家具としての質の高さはご覧のとおりですが、
お品自体もきちんと手入れをされ、大切に扱われてきたことが伺われる、
スーパーエクセレントなコンディションです。
もしかすると、このコンディションのジョージアンのチェストオンチェストは、
もう二度と入手することができないかもしれません・・。
アンティーク上級者の方にも、
きっとご期待に沿えると思います。
ぜひこの機会にご検討いただければ幸いです!
(Sales/TJ)
↑時代考証のための資料です。↓
↑白紙はA4サイズです。
※各項目の文字をクリックするとその項目の説明ページにジャンプします。
商品基本情報 | ||||
品名 | アルティメットクオリティ ジョージアン スーパーマホガニーチェストオンチェスト | |||
品番 |
CH0234
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管理番号 | Lc27-19_0408 | |
販売価格(税込) | 814,000 円 | 在庫数 | 0 | |
サイズ |
幅 1050mm 奥行 585mm 高さ 1865mm ※引き出しサイズは、1段目幅415mm×奥行485mm×高さ110mm、2~4段目幅855mm×奥行485mm×高さ2段目145mm・3段目170mm・4段目185mm、5~7段目幅960mm×奥行515mm×高さ5段目160mm・6段目180mm・7段目205mmです。 | |||
送料ランク・重量 |
Eランク (280 kg) 送料目安:16,555円~30,085円
(沖縄 45,155円)
らくらく家財宅急便による配送になります。 ※ 同梱可能な複数商品の送料はご注文後に別途お見積りをご提示いたします。 | |||
商品分類 | クラス | |||
デザイン | ||||
ユース | ||||
ランク | ||||
カテゴリ | 家具/Furniture > ワードローブ/チェスト/ミラーチェスト |
商品プロフィール | ||||
原産国 | イギリス | 年代 | 1760年代 | |
メーカー | デザイナー | |||
主要素材 | ||||
主要素材の材質 | ||||
主要素材の等級 | ||||
商品の無垢率 | ||||
カラー | ||||
塗装・仕上げ | ステイン・ニス・ワックス仕上げ | |||
その他素材 | ||||
その他の素材のカラー | ||||
メンテナンス状況 | ||||
コンディション | 傷の程度 | |||
目立つ傷 | ||||
交換・改造 | ||||
実用性 |
商品プロフィール | ||||
原産国 | イギリス | 年代 | 1760年代 | |
メーカー | デザイナー | |||
主要素材 | ウォルナット | |||
主要素材の材質 | 化粧材 | |||
主要素材の等級 | S級 | |||
商品の無垢率 | 90%以上 | |||
カラー | ダーク系 | |||
塗装・仕上げ | ||||
その他素材 | 金属 | |||
その他の素材のカラー | 素材色 | |||
メンテナンス状況 | フルメンテナンス | |||
コンディション | 傷の程度 | 年代なり | ||
目立つ傷 | 少ない | |||
交換・改造 | 年代なり | |||
実用性 | あり |
商品評価 | ||
デニムの総合評価 |
商品評価 | ||
デニムの総合評価 | S |
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