LC0144 チェコ 2010年代 トンTON ベントウッド ロッキングチェア No591 パブロ・ピカソPablo Picasso
サイズ |
幅 500mm 奥行 1100mm 高さ 1000mm 座面高 440mm 肘掛高 660mm 座面奥行 435mm 座枠高 440mm ※ 詳しいサイズは、こちら |
アンティーク家具・照明の専門店「デニム アンティーク ファニチャー」へようこそ!当店ではチェアやテーブル、キャビネットなどのイギリス(英国)アンティーク家具やランプ、シャンデリアなどのフランスアンティーク照明を低価格と安心品質で全国へお届けしております。
Outline/商品の概要(仕入担当者からのコメント)
150年以上の歴史をもつトーネットファミリーのベントウッドロッキングチェアNo591です。
“トーネットのベントウッド”については、デニムサイトでもたびたびご紹介してますし、
世界中のさまざまなお店やサイトでも詳しく解説されてますので、すでにご存知の方も多いことと思います。
でもご存じない方のために、一通りの概要を説明させていただきますね。
ここまで知っていただければ充分な”トーネット・マニア”です。(笑)
ご存知の方はさっと読み飛ばしてください。
まず、”ベントウッド”とは「木を曲げる」ということ、
そして”トーネット”とはその「曲げ木」でつくった家具のメーカー、”ゲブルダー・トーネット商会”の呼称です。
”トーネット”社は今から約200年前、1819年ミヒャエル・トーネットがドイツのボッパルトに興した小さな家具工場、
「ミヒャエル・トーネット商会」からスタートします。
当時、家具は木を「切る」「削る」という工程を経て製作されるのが常識でしたが、
ミヒャエル・トーネットは木を「曲げる」という技術に着目。
「曲げた木」による斬新なデザインの家具を考案して、産物品評会などで次第に注目を浴びるようになります。
そしてトーネットの家具は、幸運にもオーストリアの時の権力者、”メッテルニヒ”の目にとまります。
それがきっかけとなり、家具の歴史は完全にミヒャエル・トーネットを中心に回り始めます。
以前から彼が大きな可能性を信じ、すべてをかけてきた「曲げ木」という技術。
しかしそれまで何度もヨーロッパ各国で特許を申請したものの、どの国でも見向きもされませんでした。
ところが1842年、メッテルニヒ候の信頼を受けたことでオーストリア政府は彼に「曲げ木」の独占的特許を与えたのです。
それ以前、曲げ木の研究で多額の負債を抱えていたトーネットでしたが、
やはりメッテルニヒ候の口添えでウィーンの有力な貴族の宮殿の家具の製作を受注するなど、経済状態も好転、
製造工場の環境も良くなり、ミヒャエル・トーネットは、前にもまして
曲げ木家具の研究開発にいそしむことができるようになりました。
そしてそれ以降、トーネット社は着実に発展していくことになります。
そして最終的には世界中に支部をもつ前人未到の「世界帝国」と称されるまでに登りつめることになるのですが、
実は、社業の爆発的な発展には、メッテルニヒとの出会い以外にもう一つ、
ミヒャエル・トーネットの人生を変えた重要な出会いがありました。
それは・・そう、トーネットファンの方ならご存知、ウィーン市内のコートマルクトにある”カフェ・ダウム”のオーナー、
ダウム夫人との出会いです。
ダウム夫人は、1850年、オーストリアの商工業組合の展示会でトーネットの椅子を知り、
店の椅子をトーネットに発注したのです。
当時のメジャーな社交場、”カフェ・ダウム”で初めて世間にデビューしたトーネットの「曲げ木椅子」。
ウィーンで大きな話題となったこの斬新な椅子は、このカフェ・ダウムの注文を皮切りに、
プタペストのホテルへNo4を400脚納品するなど、次々とトーネット社へ注文が入って行きました。
この時、カフェ・ダウムに納品した椅子は、トーネットの曲げ木椅子として4番目の開発モデルでした。
そこでこの椅子は、後に世間では”No4”「ダウムの椅子」と呼ばれることになります。
さて、No4ダウムの成功で、ミヒャエル・トーネットはさらに「曲げ木」技術の研究に没頭します。
普通、「職人」でも事業に成功すると、今度は「経営者」として現場からマネジメントに立ち位置が変わりそうなものですが、
ミヒャエル・トーネットという人物は心底「研究者」だったのでしょう、
彼はその後も次々に新しい椅子を開発していきます。
実際、会社の規模が100人を超えるころになると、早々と彼は経営を5人の息子たちに引き継ぎますが、
製造にかかわる仕事だけは、彼が最後まで現役で行っているほどでしたから。
ちなみに、この時1853年、トーネット社は「ミヒャエル・トーネット商会」から
「ゲブルダー・トーネット商会(英名トーネットブラザーズ=兄弟社)」と社名を改名しています。
さて、トーネットが飛躍する発端となったNo4ダウムですが、
まだまだ初期型は製作に手間のかかるマホガニー製の成型合板による曲げ木椅子でした。
しかしあくなきミヒャエル・トーネットの曲げ木研究は、ついに無垢の部材ですら曲げることを可能にします。
・・No4ダウムの背もたれを見てください。
”S”字に曲がった唐草文様の部品がシンメトリー(左右対称)に設置されていますよね。
1本の棒を曲げると当たり前ですが、外側は伸び、内側は縮みます。
仮にお湯で煮て柔らかくした木材を曲げることができたとしても、乾燥すると伸ばした外側が割れてしまいます。
そこで初期のNo4では内側と外側の材料を変えることで、つまり合板を使用することで、
その木材の繊維の収縮、乾燥後の形状変化に対応していたのです。
しかし、着実に研究を重ねていたミヒャエル・トーネットは、1856年、
ついに同じ繊維構造をもつ1本の無垢材ですら、乾燥後もはじける(割れる)ことなく
曲げることができるほどに技術を向上させました。
そしてさらには、その木材の2重の曲げ、すなわち、片側を伸ばしてかつ縮める”S”字の曲げを
ついに単一材、要するに1本の無垢材でも成し遂げたのです。
ここにトーネットの曲げ木の基礎技術は決定的に完成します。
デニムのサイトで何気なくご覧になっていただいている”No4ダウム”の背もたれの”S”字の飾り。
実は、それこそがトーネットが開発した高度な「曲げ木技術」のシンボルだったのです。
この年、トーネットの曲げ木特許権は新たに更新されています。
そして、いよいよバージョンアップしたトーネットの曲げ木技術は、ついにNo4ダウムを「世界初の量産家具」という、
当時のスーパー「ハイテク商品」へと生まれ変わらせることになるのでした・・。
※以下、「お客様担当からのコメント」欄へ続きます。
Condition/商品の状態(修理担当職人からのコメント)
こちらは新品未使用品になります。
製造はチェコの民間企業TON社にて行われております。
デニムがTON社より直輸入してご案内いたします。
チェコはポーランドとともにベントウッドの原材料となる、良質なヨーロピアンビーチ(ぶな)の産地です。
旧トーネット社でもウィーン工場の次に、主力工場を1856年、チェコのコリッチャヌイに建設しています。
さらに1860年、旧トーネット社は同じくチェコのビストリッツェに第三の工場を建設しています。
この旧トーネット社のチェコ・ビストリッツェ工場を、1953年、TON社が受け継ぎ、
旧トーネット社の伝統技術を今に伝えているのです。
ちなみに”TON”とは「曲げ木家具製造工場」のチェコ語の頭文字ということです。
さて、以下こちらのロッキングチェアNo591についてご紹介します。
1860年の発売以来、150年以上経過した現在でも、旧トーネットのオリジナルデザインのロッキングチェアは、
その基本デザインを変えずに今も世界各地で生産され続けています。
もともと生産には充分な長さのブナ材と高度な曲げ木技術が伴うため、
No4ダウムやNo14のように大量生産に適した商品ではなく、
また、当時、それほど需要の大きかった商品ではありませんでしたので、
当時より生産数はそれほど多くはなく、残存しているアンティークも流通量は少ないです。
しかし旧トーネット社では、量産に適するモデルをどんどん開発していく一方、
ハンドメイドの古い家具らしさを残すロッキングチェアも、そのバリエーションをどんどん増やしていきました。
旧トーネット社の最盛期1900年代には、その数、41種類。
子供家具や特殊なロッキングチェアなども含めれば、その数は実に60種類にまで達していました。
ミヒャエル・トーネットがここまでロッキングチェアにこだわったのは、競合他社に対するトーネットの技術力の誇示と、
新しい市場だった「曲げ木家具」のイメージアップのための戦略商品として、位置づけていたためではないかと思います。
実際、ロッキングチェアがきっかけとなり、入り込んでいった市場も多かったようです。
現在、旧トーネットの直系のロッキングチェアとしては、ポーランドのノヴォ・ラドムスク工場と、
チェコのビストリッツェ工場(TON社)でのみ、生産が続けられています。
ちなみにアンティーク市場では、ヴィンテージクラスの比較的近年に製作されたロッキングチェアは
割とタマ数も多く、相場も購入しやすい価格帯の商品が多いのですが、
旧トーネット社オリジナルか、あるいは同じように生産していたJJコーン社(後にトーネットと合併)、
またはフィッシェルFISCHEL社なども含め、1910年代より古いものになると急にその数が極端に少なくなり、
価格もとても高く設定されています。
コレクションというよりも、実用的にロッキングチェアをお探しでしたら、
コンディションの不明なヴィンテージやアンティークよりも、
間違いのない新品ロッキングチェアの方が良いのかもしれません。
さて、そんなロッキングチェアですが、やはりNo14などと同様、つくられた時代や生産された場所・会社によって、
そのデザイン、構造に微妙な違いのあることがわかります。
ただし独立系(他国製など)の模倣品はここではお話に含めないこととします。
41種類ものバリエーションのうち、アンティークでは、流通量や人気の高さで
主流は3バリエーションに絞ることができます。
1つはアンティーク品では圧倒的な人気を誇る1860年の初代モデルNo7001、
そしてその改良型として登場したメイン商品No7004(=7027)と、No7028(=7029)の3つです。
※1873年 旧トーネットカタログポスター(中下段右から7001、7027、7028)
実際、1873年のポスターのカタログ(下記エキストラフォトご参照)でもメイン商品として扱われているように見えますので、
ロッキングチェアは旧トーネット社の戦略商品だったのでしょう。
No7001は商品写真で見る限り、非常に構造が複雑なのと、その構造上、何本もの長いブナ材が必要になるため、
旧トーネットから新トーネットへ移行する中で廃盤となったのではないかと思います。
そして現在の新トーネットでは、比較的量産の効きやすい2モデルが残り、
そのうち、No7004が旧トーネットのチェコ工場で、No7028が旧トーネットのポーランド工場で
引き続き生産が続けられています。
ただ、2モデルとは言っても、No4ダウムやNo14が補助笠木を変えて品種を複数つくっていたのと同様、
旧トーネットでは弓型の脚の間の笠木(ストレッチャー)を差し替えることでバリエーションをつくっていますので、
No7004、No7028ともに基本的な構造に変わりはありません。
そういう見方をすると、当時41種類の半数近くがNo7004やNo7028と同様のバリエーションと見ることができ、
その装飾の笠木がリング系かスクロール(渦巻き)系かで、すなわち
No7004系かNo7028系かで、やはり大きく2種類に大別することができます。
ただし初代モデルNo7001のみ、基本構造から違っていますので、全体としては、
ベントウッドロッキングチェアの主流モデルはやはり3種類となります。
上のお写真は20世紀初めごろのバルセロナで描かれたアンティーク絵画です。
絵画ですのでロッキングチェアが正しく描写されているか、定かではありませんが、
おそらくNo7028のスクロール系バリエーション、No7024のモデルではないかと思います。
現在も生産が続けられているポーランド製No7028は、この絵のように、
かなり旧トーネットの古典的なイメージを残しているように見えます。
というよりもほぼ数十年前のままに近い「型」で生産されているのではないかと思います。
とすれば、生産工程もかなり古いスタイルで行われていることが想像されます。
一方、下の写真はピカソが愛用のロッキングチェアで戯れている有名な写真。
こちらはリングストレッチャーのNo7004系バリエーション、No7022になります
No7004が、”ダブルリング”なのに対し、No7022は”シングルリング”となっています。
現在、旧トーネットのチェコ第2工場、TON社ではこちらのNo7004系デザインを生産しています。
ポーランド製と違って、チェコ製は旧トーネットのイメージは残しながら、
あえてモダンな印象にデザインを進化させているように思われます。
またスクロール型のストレッチャーよりもリング型のストレッチャーの方が量産化に対応しやすかったと思われるので、
TON社は比較的早い段階から近代的な生産設備で製造を行なっていたことが想像されます。
実際、背面のちょっと飛び出ていたスクロール型の飾り兼持ち手部分を、ハンガー型の完全な持ち手にあらためたり、
また、非常に長いブナ材が必要だった弓型の脚のサイドフレームを、2ピース(センターつなぎ)と改良したり、
近代化を推し進めたことで材料の確保を容易にし、また無垢のしなりやはじけの防止につなげています。
あと、旧トーネット社のフランケンベルグ工場でも、
ロッキングチェアが”復刻プロジェクト”として一時的に製作されたこともあったようですが、
人伝ての話ではその価格、3ケタ(○○○万)だったそうな。
どのモデルが復刻されたのかもわかりませんが、あまり調べて参考になるような話ではありませんね。
ちなみに現在の”トーネットTHONET”ブランド(商標権)は、
この旧トーネット社のフランケンベルグ工場を引き継いだドイツの新トーネットが継承しています。
しかし、ミヒャエル・トーネットが興した純粋な”ゲブルダー・トーネット商会”(ここでは旧トーネット)は
第一次大戦後、いったん消滅していますので、現在THONETに由来する全ての会社は、
旧トーネット社の「末裔」たち(ここでは新トーネット、またはトーネットファミリーと呼びます)、
と考えていただいた方がよろしいかと思います。
このように、全世界を席巻した「トーネット帝国」が崩壊した影響は非常に大きく、
現在でも消費者に非常に分かりにくい複雑な状況をつくっています。
我も我もと多くの曲げ木メーカーが”トーネット”を語り、商標を正統に受け継いだドイツの新トーネットでさえ、
THONETブランドを告知できない国すらある状況なのです。
それらのお話については別の機会にお話しをさせていただきたいと思います。
乞うご期待!
さて、デニムの目利きで仕入れているわけですから、
もちろん前述のようにアンティークのNo7004ロッキングチェアを徹底的に研究した上で、
歴史あるNo7004を受け継ぐNo591の仕様として、最もふさわしい形でご案内させていただいております。
まずほぼ最終形となった旧トーネット最盛期、1904年の商品カタログで、
No7004およびNo7027のデザインを確認してみます。
※1904年 商品カタログ抜粋(右がNo7027、中がNo7004、左はNo7001)
全体のフォルム、構造はほぼ変わっていないように思われます。
ただし、部分的には2つのデザイン上の違いが見つかります。
1つは前述した背もたれ上部がハンドル型に変わったこと、
もう一つは座と脚をつなぐ後方のストレッチャーが廃止されていること、です。
サイズ的には1904年当時、No7004/No7027ともに座面サイズは幅48cm×奥行48cmとあります。
座面形状は丸みを帯びた四角形です。
一方、現在のNo591は座面幅45cm×座面奥行46cmの1サイズで、
全体のサイズバランスは変わらずに少しスリム化されました。
座面形状も、ほとんど変わっておりません。
全体的な印象としては少しスマートになり、ポップになった感じです。
座面や背もたれの素材は、アンティークでたまにエンボス入りの板座や生地張りも見かけますが、
新旧問わず、圧倒的にケインシート(籐張り)が主流です。
ただし、古いケインシートが手編みであるのに対し、こちらは機械編みのはめ込み式。
今やケインシートを編んでくれる職人はほとんどいなくなってしまったので、
実用的なことを考えるとやはり機械編みの方が安心でしょう。
機械編みならばお張替も可能なので、将来のためにTON社より張り替え用のケインシートも送ってもらっています。
将来的なサポートも万全です。
最後に、カラーはアンティーク風なエボニー(黒檀色)系といたしました。
現代のウレタン塗装になりますが、その分、耐久性は高く、アンティークの最大の弱点、
水分でニスが白化してしまう欠点もありません。
一般のご家庭ではもちろん、オフィスなどの業務用としても存分にご活用いただけます。
ただし、現代塗装とはいえ、木目を生かした半透明のダーク色ですので、
無垢の家具らしさは残されておりますし、本物のアンティークと並べても不自然さはありません。
以上、アンティークを知り尽くしたデニムだけに、徹底的に仕様にはこだわらせていただきました。
アンティークではなかなか手に入らない、
それどころか新品もすでに入手困難になっているベントウッドロッキングチェアを、まっさらな新品の状態で。
ぜひ将来、本物のアンティークに育てていただければ幸いです。
※当ベントウッドチェアは昔ながらの製造工程で製作されるため手作業も多く、現代の生産設備に比べれば手作りに近い商品になります。
そのため商品価値に影響しない程度のわずかな小傷、色むら等がある場合もございますが不良品ではございませんので、
あらかじめご了承いただきたくお願い申し上げます。
Impression/当店の評価(お客様担当からのコメント)
※「仕入担当からのコメント」欄からの続きです。
・・歴史的な偉業の背景には、いつの時代でも、その時代が求めた「必然性」が存在します。
1本の無垢材で、”S”字カーブの曲げ木を実現したミヒャエル・トーネット。
彼の生きた時代には、産業革命によって急速に膨れ上がった巨大な「都市需要」がありました。
すなわち、大都会”ウィーン”にとって、高価で少量しか供給されない従来型の「木工工芸品」としての家具は、
もはや時代のニーズに合わなくなってきていたのです。
そこに唯一家具の量産を可能にする「曲げ木」技術が完成しました。
しかもそれはトーネットだけの独占的な特許権として、です。
・・もはやあとは多くの言葉を要しなくてもお分かりですよね。
そう、あたかもビッグバンのごとく、トーネットはその後、急速に膨張していくことになります。
もちろんトーネットの成功は時代の潮流だけではありません。
ミヒャエルトーネットのあくなき探求、そして5人の息子たちの経営努力の賜物であることは言うまでもないことでしょう。
バージョンアップした曲げ木技術の完成(再特許取得)はミヒャエル・トーネットが60歳の時。
彼が本当にこの世に功績を残すのは、さらにその後のことなのですから・・。
尊敬の念でいっぱい・・本当に頭が下がります。
さて、トーネットが歩んだ次のステップは、産業革命によって膨大に膨れ上がった、
「成長需要」への供給体制をつくることでした。
まずNo4が”ノックダウン”と呼ばれる「組み立て型」に改良されました。
少量の部品を組み合わせることで1つの椅子を構成する、
いわゆる「世界初の量産家具」No4ダウムの最終形が完成した瞬間です。
そして生産工程を徹底的に単純化し、特殊な熟練技術をもたなくとも、
No4ダウムの構成部品は製作が出来るように工夫されました。
つまり、工場の周りから多くの人を集めさえすれば、No4ダウムの大量生産が可能になったのです。
これは家具史の中でいわゆる「工場制手工業」、すなわち家具の大量生産時代が始まったことを意味しています。
それに先立ち、トーネットは当時の最先端技術、「蒸気機関」を工場に取り入れています。
時は1853年の後半。
「曲げ木」の蒸し器のための導入と思われますが、いち民間企業としては当時、かなり進んでいたのではないかと思います。
一方、ミヒャエル・トーネットと5人の息子たちは、事業家としてもその先見性や実行力の面で、
非凡な才能を発揮していきます。
まずは新しい工場地の取得。
1856年、トーネットは手狭になったウィーンから、コリッチャヌイに主力の工場を移設します。
コリッチャヌイは広大なビーチ材の森が横たわる肥沃な土地で、
近隣には低賃金で働かせることのできる労働者の住む町もありました。
この地を首尾よく買収し、ここに原料調達、労働力の確保の環境が整いました。
そしてミヒャエル・トーネット自ら量産のための工場設備を開発します。
現代風な表現でいえば、曲げ木家具製作のための丸のこや半自動の旋盤らしいのですが、
量産に不可欠な機械設備はミヒャエルとその息子たちが試行錯誤しながら自社開発していきます。
門外漢でも必要とあらば自らが行動する、この実行力。
ここでトーネットの”ビッグバン”は目前にまで迫りました。
さらには多くの無教養な人たちの教育。
野良仕事しかしたことのなかった人たちをどのように工場作業員として育てていったのか、
研修活動も想像を絶する重労働だったと思います。
ちなみに工場がきちんと稼働して完成品を産出できるまで、結局、数年の歳月を要したようです。
そのような多忙な日々の中ですが、ついに1859年、世界史に残るスーパーメガヒット商品、”No14”を開発します。
最初のNo14はコリッチャヌイ工場にて生産されました。
後に世界初の“コンシューマーチェア”(消費者のための椅子)と言われるほど、その売れ行きは例のない膨大な量で、
その後70年間で5000万脚、現在までNo14の模倣品も含めると実に2億脚!もの椅子が生産されたといわれています。
すぐにコリッチャヌイ工場では生産が追いつかなくなり、1860年にはビストリッツェに、5年後にはグロスウグロウ、
ハレンコフ、フセチンとトーネットは発展に発展を重ねていきます。
そしてトーネットはわずか20年後、1876年には5つの大工場(6番目のノヴォ・ラドムスクは1880年設立ですので除く)、
4,500人の労働者を雇用し、10台の蒸気機関を所有、1日/1,750ヶの椅子、250の家具を生産し、
ヨーロッパはもちろんロシアからアジア、北米、南米まで、販売は全世界に輸出をするまでに至っています。
確かに“No.14”は世界史上に残る優れた名作椅子ですが、地方の弱小家具メーカーだったトーネット商会が
これだけ短期間に世界企業へと変貌を遂げられたのは、
ミヒャエル・トーネットと5人の息子たちの経営者としての手腕を見過ごすわけには行きません。
例えば、政治力を使った原料調達の交渉力、部品輸送で現地組み立てという従来の商品物流を根底から変えた輸送方法、
展示会を活用したイベントプロモーションや商品カタログ/ポスターといった当時では最新の宣伝活動と、
あらゆる経営面で彼らは天才的な手腕を発揮するのです。
どれほどNo14が優秀な商品でも、彼らの才能がなければ、新たな歴史の扉は開かなかったでしょう。
優秀な商品、といえば、もうひとつ、No14が誕生した翌年1860年、注目すべき商品が発売されます。
No7000番台の第1号、”No7001”ロッキングチェアです。
複雑で高度な曲げ木技術で製作された、この揺れる肘掛椅子。
今までとても庶民の手には届かなかった高級家具が、世界で初めて庶民の手の届く価格で誕生したのです。
もともとロッキングチェアなど全く一般庶民の認知のなかった商品でしたので、
生産も販売も当初はごく少量だったようですが、ミヒャエル・トーネットの稀代まれなる先見性は、
このロッキングチェアが現代でも生き続けていることで、明らかに証明されています。
その後、彼らの狙い通り、パブロ・ピカソなど、著名な文化人が愛用するなど、着実に庶民にその認知は広がっていき、
No7001をルーツとするロッキングチェアは、常に人気商品としてラインアップされ、21世紀の今でも生産が続けられています。
驚くべきは150年前すでに、商品を「量販品」と「高級品」に分け、顧客を分類し、そして育成するという、
近代的なマーケティング・ストラテジーを実践していたトーネット一族、
その偉大な才能には本当に言葉がありません。
・・長々とよもやま話にお付き合いいただきありがとうございます!
最後に一言だけ。
-ミヒャエル・トーネットは自身のライフワークだった「曲げ木」の生産技術を、その人生の晩年になってようやく確立します。
「世界初の量産家具」 No4ダウム、そして「夢の“コンシューマーチェア”」 No14、
さらに「世界初の庶民のための高級家具」 ロッキングチェアNo7001と、
歴史に残るそれらの商品を開発したのは、彼の75年間の人生の中で、実に60歳を過ぎてからでした。
これほど晩年まで、夢を追い続けることのできた原動力は、一体どこにあったのでしょう。
1871年3月3日、偉大な発明家であり企業家だった、ミヒャエルトーネットはその生涯に幕を閉じました。
彼が興した”ゲブルダー・トーネット”商会は、今や日の昇る勢いで発展している段階にあり、
5人の息子たちに自身の経営のバトンが完全に手渡されたのを見届けた後でしたから、
安心しきっての大往生だったことでしょう。
彼の人生には一片の悔いもなかったのでは、と思います。
現在、彼はウィーンの中央墓地に眠っているそうです。
かのベートーベンをはじめとする稀有な音楽家たちの墓が並ぶ一角に、
愛すべき一族とともにおさめられているそうです・・。
※各項目の文字をクリックするとその項目の説明ページにジャンプします。
商品基本情報 | ||||
品名 | トンTON ベントウッド ロッキングチェア No591 パブロ・ピカソPablo Picasso | |||
品番 |
LC0144
|
管理番号 | TON13-1_0112 | |
販売価格(税込) | 82,080 円 | 在庫数 | 0 | |
サイズ |
幅 500mm 奥行 1100mm 高さ 1000mm 座面高 440mm 肘掛高 660mm 座面奥行 435mm 座枠高 440mm ※ハンドメイドに近い無垢の木工家具ですので、サイズには多少製造誤差のある場合がございます。 | |||
送料ランク・重量 |
100kgサイズ (160 kg) 送料目安:2,160円~6,404円
(沖縄 11,340円)
ヤマト便による配送:日時の指定はできません。 ※ 同梱可能な複数商品の送料はご注文後に別途お見積りをご提示いたします。 | |||
商品分類 | クラス | |||
デザイン | ||||
ユース | ||||
ランク | ||||
カテゴリ |
椅子/Chair
> ラウンジチェア/ロッキングチェア
無銘の椅子コレクション/Premium Chair Collection > 現代のベントウッドコレクション > トン/TON |
商品プロフィール | ||||
原産国 | チェコ | 年代 | 2010年代 | |
メーカー | デザイナー | |||
主要素材 | ||||
主要素材の材質 | ||||
主要素材の等級 | ||||
商品の無垢率 | ||||
カラー | ||||
塗装・仕上げ | ||||
その他素材 | ||||
その他の素材のカラー | ||||
メンテナンス状況 | ||||
コンディション | 傷の程度 | |||
目立つ傷 | ||||
交換・改造 | ||||
実用性 |
商品プロフィール | ||||
原産国 | チェコ | 年代 | 2010年代 | |
メーカー | デザイナー | |||
主要素材 | オーク | |||
主要素材の材質 | ||||
主要素材の等級 | ||||
商品の無垢率 | ||||
カラー | ||||
塗装・仕上げ | ||||
その他素材 | ||||
その他の素材のカラー | ||||
メンテナンス状況 | ||||
コンディション | 傷の程度 | |||
目立つ傷 | ||||
交換・改造 | ||||
実用性 |
商品評価 | ||
デニムの総合評価 |
商品評価 | ||
デニムの総合評価 |
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